2010年05月13日

沖縄:close the base はいよいよ正念場に

●鳩山首相へのグアム・北マリアナ2知事の面会を官邸が阻止とか。なんだか、首相孤軍奮闘、周りはみんな官僚に取り込まれた悪者みたいな感があるけど、それは恐らく見当違いだろう。一応、これまでの内閣の動きはばらばらに見えるけど、それを矛盾無く説明できる唯一の解釈を書こう。

●まず、重要な文書は次の2つ。1つは2006年の日米合意に於けるロードマップ。この段階では日米閣僚の単なる合意であって日本の国内法には優先しないものであった。もう1つは、2009年のグアム移転に関する日米政府間協定。これは政権交代を見越して、09年2月にクリントンが来日し、4月に衆議院で承認され、5月から発効したもの。こちらは国会の承認がある政府間の協定なので、日本の国内法に優先する。

●見れば分かるが、09年協定はロードマップ遂行を約束する内容になっており、辺野古移転は他の合意内容と一体のパッケージになっている。つまり、辺野古移転が無くなれば、ロードマップ自体がご破算になるわけだ。このような縛りを政権交代を見越して駆け込みで発効させたことは残念至極ではあるが、それは今更言うてもせんないこと。

●民主党の各閣僚、特に岡田外相が当初からロードマップの微調整案を出したのもこのためだ。およそ鳩山首相以外の民主党閣僚はほぼロードマップに準じて動いている。この辺り、首相周辺が「腹案」作りをする一方で、民主閣僚にはロードマップに従って動くようにという指示があったと考えれば理解可能になる。内閣自体がハナからロードマップを大きく外れた動きを取れば、ロードマップ自体がご破算になる可能性があったからだ。

●しかし、米側から原案通りという怒りを買ったのが昨年末。このあたりの米の動きも当然だろう。そのために09年協定を慌てて取り付けたのだ。日本側は、この時点から、沖縄の反対運動を背景に改訂を目指すことに切り替えた。当初の期限であった昨年末を引き延ばし、辺野古のある名護市長選挙を跨いで、沖縄返還記念日のある5月に延期したのもそのためだろう。4月25日の沖縄での反対集会を受けて、移転先の辺野古地元合意がいよいよ怪しくなった。ただし、09年協定の手前、米側を差し置いて合意内容の大幅改訂に繋がるような動きは内閣としては取れない。それはその時点で協定違反という抗議を受けるからだ。したがって、内閣としてはあくまで合意した時点とは状況が変わったことについてまず米側と協議しなければならない。それが最初に述べたグアム・北マリアナ2知事の面会を官邸が阻止ということであり、両知事訪米後の帰途での面会はOKということの意味だ。

●何度かツイッターで2006年合意の美味しいとこ取りはできないと書いたけど、実はそういうことは分かっていたのだろう。09年協定の縛り、これが最大のポイントであると考えれば、これまでの内閣の動きをまるごとうまく説明できるとぼくは思う。米としては来年予算案の6月までにはハッキリさせねばならないので、米側はある程度譲歩すると思う。どの程度の譲歩を引き出せるかは不明だけど、辺野古移転の一括パッケージを取り外せば成功である。残りの合意内容を先行させれば、米側も予算は組めるし、日本側もロードマップを離れて(辺野古案を正式に破棄して)移転先や移転方法で検討幅を広げられる。結局原案通りという結果であったとしても、あるいは、海外という結果であったとしても、国内的にも対米的にも合意形成に至ることが大切。そのためには、一括パッケージの取り外ししかないだろう。 

shanghai_ii at 02:19コメント(15)トラックバック(0) この記事をクリップ!

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コメント一覧

1. Posted by なー   2010年05月13日 09:27
5 shanghai_ii様、こんにちは。いつもためになる記事をありがとうございます。
今回は、政治小説を読んでいるようでとてもおもしろかったです。
2. Posted by この国に社民党はいらない   2010年05月13日 10:53
1 さすが社民党支持者だけあって、相変わらず妄想だらけの自分勝手な論調ですなー。
3. Posted by maxgrs   2010年05月13日 13:25
>内閣としてはあくまで合意した時点とは状況が変わったことについてまず米側と協議しなければならない。

今からですか・・・

http://www.sonoda-yoshiaki.com/index2.html

現実を見れば、個人的にはこっちだと思っています。
4. Posted by kc   2010年05月13日 16:17
米海兵隊のグアム移転を主張されるなら、同時に陸上自衛隊の西部方面普通科連隊(上陸部隊)の沖縄駐屯もセットで提案しないとだめですよね。中国はステルス潜水艦によって台湾・先島諸島近辺での優位性を着々と築いていますよ。第7艦隊が先島諸島近辺に近づけなくなるとすれば、米海兵隊の沖縄駐留あるいは陸上自衛隊・上陸部隊の沖縄駐屯が絶対不可欠なことぐらい明白でしょ。でないと例えば与那国島が攻撃を受け占領されても奪い返せませんよ。「沖縄県民感情を考慮して」という言葉を左翼はよく使いますが、与那国島民も沖縄県民ですよ。米海兵隊のグアム移転という結論ありきで、それに合わせた情緒的な意見や屁理屈ばかりでは、日本の領土を守る事の重要性を無視した意味のない議論でしかありません。社民党は憲法9条改正や陸上自衛隊・上陸部隊の沖縄駐屯を受け入れていませんが、iiさんはどうなんですか? 私は最終的には自分の国は自分で守るべきだと考えているので、米海兵隊のグアム移転は結構な事だと思いますが、それならそれに代わるものを自分達で用意しなければと思っています。そこから逃げていたのでは、他に何を言っても説得力に欠けますよ。
5. Posted by 八宝菜   2010年05月13日 20:44
ご無沙汰してます。
サイパン移転に一票です。

昨年の日本の貿易額はアジアが50%、その中で中国が20%でした(アメリカは13%)。こんなに経済的に結びついたら、お互い失うものが多くて戦争なんておこせません。罵り合いはやっても、中国と日本が戦争する確率は東海地震より低いと思います。

決着できないじゃないか、と鳩山さんへの非難が多い中で、サイパン案以外、別の解決策をいう人がいないですね。マスコミが報道するたびに、非難するより対案を出せと言いたくなります。

6. Posted by shanghai_ii   2010年05月13日 21:00
>なーさん
 一応、現状の認識についてだけ書いたんで、おもしろさはイマイチかなと思ってたんで、うれしいっす。ハードボイルド仕立てにするならば、クリントン来日の前後がすんごく妄想が広がります。小沢西松事件の後に、中川氏の例の酩酊事件→罷免。クリントン来日・協定調印はその直後です。その後、自民党にチャンスがあったのに解散せず、協定は衆議院で可決。まもなく小沢辞任へと続きます。これが数ヶ月の出来事です。
7. Posted by shanghai_ii   2010年05月13日 21:05
>この国に社民党はいらない さん
 脊椎動物では、脊髄反射というのは最強の行動様式です。ただ、致命的な難点があって、それは今までのやり方が通用しない出来事に遭遇したときに大きな失敗を招くということです。だから、脊髄反射で行動した後は、必ず反省するのがよろしい。これで、大きな失敗を小さな失敗に変えることができます。9勝1敗の勝率でもその1敗が致命的ならば、なんにもなりません。反省、反省、そのために大脳が付いております。
8. Posted by shanghai_ii   2010年05月13日 21:18
>maxgrs さん
 確認しておきますが、上に書いたことは、ぼくの主張ではありません。ぼくはもっと過激な意見を持ってますが、それは、ぼくが全くの素人だからだと自認してます。そこで、この内閣のばらばらな行動を1つのまとまったものと捉えるならば、どのような解釈が成り立つかを書きました。
 今からですかと仰いますが、日米でまともな協議が再開できたのはつい最近のことですよ。
 ご案内のページは、上杉さんの意見のことでしょうか。そのとおり、いきなりの海外移転は放棄したんでしょうね。この点は米側から拒否してくる可能性が大です。理由は明瞭。米側の来年度の予算が通りません。協定が日本で承認されているのに、何故そこまで大きな変更をする必要があるのかを問われます。したがって、普天間→辺野古は継続協議に持ち込んで他の案件を先行することを承認させるのが最優先と思うわけです。
9. Posted by shanghai_ii   2010年05月13日 21:42
>kcさん
 なんで皆さん、そんなに先走るんでしょうか。さきほども書きましたが、ぼくは内閣の現状をどう見るかを書いたわけ。
 この種の話題は、なんぼでも広がりますから、それぞれコメント付ける人が自分の広げたい方向に持って行くのは仕方ないけど(^^;
 1つだけはっきり言えるのは、米軍の代わりをそっくりまるごと自衛隊に取って代わらせるというのは非現実的です。
 沖縄海兵隊のグアム移転で、中国の脅威にさらされるほどに抑止力がなくなりますか? その場合の中国の脅威はどういう種類のものかぼくにはサッパリ分かりません。長い戦争に突入する覚悟を決めるのに、海兵隊の出動が2日遅れることが動機になるのでしょうか。
10. Posted by shanghai_ii   2010年05月13日 21:49
>八宝菜 さん
  twitterでは、日中でいざこざがあった場合にそれを修復するチャンネルが不在で、ちょっとしたことが大きな出来事に発展する可能性があるということはどなたが書いてはりました。これはかなり重要なことと思います。前線の兵隊が先走ってしまったり、たまたま遭遇した物同士が衝突してしまったりという、一種のアクシデントが、それを解決するチャンネルがないために戦争へ至るなんてことは、過去の歴史に於いてもあったことです。
 経済だけじゃなくて、是非、日米安保に掛けるぼくらの情熱の半分でええから日中外交に使って欲しいものです。
11. Posted by kc   2010年05月13日 22:17
という事は海兵隊がグアムに移転して、陸上自衛隊・上陸部隊が沖縄に駐屯しなくても、中国が与那国島を占領する理由がiiさんにはサッパリ分からないので心配いらないという見解でよろしいのですね。「内閣の現状をどう見るかを書いただけ」とおっしゃいますが、つぶやきを拝見する限り、グアム移転を熱望されているのは明らかで、世論をそちらの方向に動かすよう必死に発言を繰り返されているわけですから、現状認識だけとか逃げずに、国外移転そしてそれに代わる上陸部隊も必要ないという立場をはっきりとるべきだと思います。ちなみに私は、相手が攻めてくるかどうかがはっきり分からなくても、相手にインセンティブを与えないのが防衛の一部だと思っていますので、国外移転でも良いが陸自・上陸部隊の駐屯は必要だという立場をとります。ここの最後の部分から旧社会党と社民党は、ずっと逃げてきました。インセンティブというものは、受け取る側にも悲劇を招くという事は、歴史が繰り返し証明しています。
12. Posted by kc   2010年05月13日 22:26
(インセンティブに関して追加)つまり冷静な状態では、べつにあんな島、危険を冒してまで手に入れなくてもいいやと思っていたのが、あまりにも美味しい状態が生じてしまったが為、平常心を失い欲を出してしまうというのが人間の愚かなところで、そのために両サイドが多大な被害を被ってきたのが人類の歴史だと思います。
13. Posted by shanghai_ii   2010年05月13日 22:38
>kcさん
 文字通り読むことをお勧めします。文字通り読めないのは、kcさんの中に弱点があるからですよ。世論がどうのこうのって、ぼくの知ったことじゃありません。ぼくは思ったことを書いてるだけで、文字通り読んでくれることを歓迎します。
14. Posted by shanghai_ii   2010年05月13日 22:39
 社民がどうのこうのって馬鹿じゃないの? 常に政党と結びつけてしか話を進められないのは、思想の貧困でっせ。みなさん。
15. Posted by kc   2010年05月13日 23:10
社民党に関して言えば、iiさんは世間でも良く知られた社民党支持者の加藤登紀子や横山希美子(通称きっこ)のコメントに頻繁にRTしてますよね。 まあ、それはさておいて「海兵隊の出動が2日遅れること」についてですが、恐らくグアム駐留の場合、到着まで2日かかるとおっしゃりたいのだと思いますが、一旦グアムに引いてしまえば、海兵隊は揚陸艦など絶対に出動できませんよ。グアムと先島諸島の間は、ずっと深海で、中国海軍の深海でのステルス潜水艦による迎撃体制は万全ですから。佐世保の揚陸艦エセックスでさえ、佐世保に居るのは一年のうち約5カ月ですから、中国はエセックスが佐世保にいない時を狙うでしょう。ちなみに強襲へりMV-22オスプレイは、グアムからでは遠すぎて役に立ちません。ですから海兵隊が沖縄に駐留しないのなら、陸自・上陸部隊の駐留が、絶対必要なのは明白ですが、そこをつかれると人を馬鹿呼ばわりして逃げるのが毎度の手法のようですね(笑)

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