将棋の元名人、加藤一二三九段が自宅のある集合住宅で野良猫に餌を与え続けたため、異臭などで苦痛を受けたとして、住民が、餌やりの禁止と慰謝料の支払いを求めた裁判で、東京地方裁判所立川支部は「猫の命を守りたい気持ちは理解できるが、我慢できる限度を超えている」などとして、加藤さんに、餌やりの禁止とおよそ200万円の慰謝料の支払いを命じる判決を言い渡しました。
この裁判は、将棋の元名人、加藤一二三九段が東京・三鷹市の自宅のある集合住宅の玄関や庭で、平成5年ごろから野良猫に餌を与え続けたため、猫が集まってふん尿で異臭が出たり、駐車場の車が傷つけられたりして苦痛を受けたとして、集合住宅に住む人と管理組合が、加藤さんに餌やりの禁止と645万円の慰謝料の支払いを求めていたものです。これに対し、加藤さんは「落ちていたふんが猫のものだとは限らないし、定期的に敷地内を見回って掃除もしている。餌をやらなければ猫が死んでしまう」などと主張していました。13日の判決で、東京地方裁判所立川支部の市川正巳裁判長は「集合住宅内で動物を飼ってはいけないという規約に違反しており、住民に迷惑を及ぼしていることは明らかだ」と指摘しました。そのうえで「猫の命を守りたい気持ちは理解できるが、被害が続いており、住民が我慢できる限度を超えている」として、集合住宅の敷地内での餌やりの禁止とおよそ200万円の慰謝料を支払うよう命じました。判決後、加藤さんは「猫を守りたいという人として自然な気持ちを理解してもらえず、到底納得できない判決だ。すぐに控訴したい。判決では、敷地の中での餌やりがだめだと言われたので、これからは敷地の外で餌やりを続けようと思います」と話しています。また、原告の代表で、集合住宅の管理組合の理事長を務める島谷清さんは、「こちらの主張がほぼ全面的に認められたので、非常にうれしく思っています。被告の性格からみて素直に従うか疑問ですが、正しいことは勝つという気持ちです」と話しています。加藤一二三九段(70)は、中学生で将棋のプロ棋士になり、「名人」をはじめ「王位」や「棋王」などタイトルをあわせて8期獲得しています。現役最多の通算1283勝をあげるなど、将棋界を代表する棋士のひとりです。