前にも書きましたが、案ではシニアサブ構造となっている証券化商品の「最優先持分」について償却原価が使えることになっています。この部分は銀行が大量に保有しているのですが、これについてはいまのところ「最優先持分」であり、最上位格付けを要件としていないことに注意が必要です。つまり、どんなに中身が悪くても、スーパーシニア(最優先持分)なら償却原価がつかえる。 2009年12月末の決算からIASBのこのルールを適用することを選択できる欧州の銀行が、すごい利益を出すかもしれませんね。ただ、もちろん会計上の利益であり、景気回復とはまったく関係ありませんし、貸し出し増加にもつながらないかもしれません。きっとそれで膨大な貸し倒れ引き当てを償却させるのが本当の狙いなのでしょうか。 偶然かもしれませんが、6月15日にECBが発表したFinancial Stability Reviewでは、欧州の銀行システムの抱える証券およびローンの損失は6490億ドル、そのうち償却済みのものが3650億ドル、あと対応が必要なものがのこり2830億ドルとされています(同ペーパー102ページ。直接リンクできないのですみません)。このうち有価証券部分に限れば、損失は2180億ドル。証券だけに限った未償却分は明らかではありませんが、いずれにしても、償却原価をこれらの有価証券(ほとんどは債券ですし、証券化商品にしても銀行の場合かなりの部分が「最優先持分」であろうと思われます。そしてこれらの多くは最終的には満額帰ってくると考えられますが、時価評価で大きくやられています)に適用できたら、これらの損失は計上しなくて済むことになります。そしてすでに時価で引き当てた部分は戻し益が発生する可能性があります。6月にこういうデータが公表され7月にIASBの唐突とも強引ともいえるEDが出たことが偶然なのかどうか・・・ ECBの範疇にある国ごとに様々な状況を抱えているのであり、国によっては政府保証によって銀行のファンディングをかろうじてつけている。最近は巨額の資金供給で問題は表面化していませんが、それの出口を考えた時、できるだけ早い時期に自力でのファンディングが可能な状況にしなければならない。2009年12月末にどうしてもこういう手当をして利益を出させ、ローンなどの償却も進めさせる必要があるのかもしれないと思いました。 |
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全くの異分野で国際基準策定に関わっている者です。 |
通りすがり 2009/08/28 06:08 |
通りすがりさん、どうもです。国際基準についてはワタクシも言いたいことがたくさんあります。基本的には日本人は「国際」という言葉に弱すぎる。明治以来海外から学んできたことがあまりにも多すぎて、その癖が抜けておらず、技術面では客観的に追い越したことが分かるからともかく、文化、ルールなど本来海外が日本に学ぶべきことまで英語圏合わせている気がしてなりません。突き詰めれば、基準を握るパワーの源泉がどこなのか、国家として改めて考えてみる必要があると思います。 |
厭債害債 2009/08/29 09:54 |
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