活動しているのは、ギャンブル依存症からの脱却を目指す自助グループ「GA(ギャンブラーズ・アノニマス)甲府」と、依存症者を持つ家族でつくる自助グループ「ギャマノン甲府」。依存症に悩む夫婦が、都内にある同様のグループのセミナーに参加。「参加者が話す言葉一つ一つに共感でき、気持ちが楽になった」ことなどがきっかけだった。 両グループとも、参加者は全員匿名で、身分を明かす必要はない。ミーティングは「言いっぱなし」「聞きっぱなし」が原則。参加者が順番に自らの経験や家族への思いを語り、参加者はじっと耳を傾ける。 ミーティングは、GAが毎週水曜(午後7時〜8時半)、ギャマノンが毎週土曜(午後1時半〜3時)、ともに甲府市の県ボランティア・NPOセンターで開催。それぞれの活動はホームページで紹介している。 さまざまな依存症に詳しい甲府・住吉病院の大河原昌夫副院長(精神科)によると、ギャンブル依存症は、アルコールや薬物依存症と同様、パチンコなどへの欲求が抑えられなくなる。社会の認知度は低く、意志の問題ととらえられがちだが、世界保健機関(WHO)で認めた病気。 依存症者は、家族にうそをついたり、財産を売ったりと、あらゆる手段で金を得ようとする傾向がある。家族が精神的にも経済的にも悩み、自分の問題と思い込んでしまうなど「共依存」の状態に陥るケースも多いという。 大河原副院長は「ギャンブル依存症の詳しい原因は解明されておらず、特効薬はない。現状では自助グループに参加して病気に対する理解を深め、ギャンブルから距離を置くよう励まし合うのが有効。抜本的な解決には国レベルの対策が必要」と指摘している。 借金重ねた末離婚 夫の行動で不安 先月、甲府市内で開かれたギャマノン甲府の家族セミナー。集まった依存症者やその家族約30人を前に、7人が体験を発表した。依存症者は「勝った快感が忘れられない」「借金を取り返したい」「ストレス解消」などさまざまな要因からギャンブルに夢中になり、衝動が収まらなくなった状況を打ち明けた。 山梨市のミチオさん(35)=仮名=は大学時代から、パチスロにのめり込んだ。大学卒業時のギャンブルによる借金は50万円。「就職を機に気持ちを切り替えよう」と必死に働き、「金を使うな」と書いた紙を家財に張ったが、借金はどんどん増えていった。 「自分の場合、楽しいとか、勝ち負けではなかった。(パチンコ店は)とにかく居心地が良かった」。借金は200万円に膨らみ、就職後に結婚した妻が全額返済。その後は妻が給与はもちろん、身分証明書なども管理したが、通勤用の定期券を払い戻したり、隠れて家財を売ったりして資金をつくった。 こうした生活が続き妻とは離婚。これを機にギャンブルを断ち切る決意をした。今もギャンブルへの衝動は収まらないと打ち明けるが、GAとつながり「仲間と苦しみを分かち合うことで、自分一人ではないと安らげる」といい、懸命に依存症と闘っている。 甲府市のサキさん(33)=仮名=は、3年前に結婚した夫がギャンブル依存症だった。同棲どうせいしていたころ、夫は定職があったが、さまざまな理由をつけては金を貸すよう言ってきたという。 その都度、金を渡してきたサキさんだったが、ある日、夫の財布の中から消費者金融のカードや明細書を見つけた。「ショックだった」。精神科医に相談したところ、夫は依存症の疑いがあると言われ、GAを紹介された。 その後、ギャマノンを知り、活動に参加するうちに、自らが「共依存」であることに気付いた。現在はミーティングに参加しながら、「夫の問題は夫に任せ、自分の問題と向き合うようにしている」という。
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