ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイが鉄道会社バーリントン・ノーザン・サンタ・フェ社(BNSF)の77%の株式を取得することで合意に達したとのこと。鉄道事業はある意味旬のテーマである。ひとつはグリーンニューディールの旗手として、もうひとつはインフラ整備投資対象として。 NY時代に株の運用を担当していたときには、チームで選んだ鉄道株が大当たりだった。まさにモーダルシフト(輸送手段が環境問題などをきっかけに転換し始めたこと)の波の最初に乗れた。2005年ごろ原油価格が当時上がり始めていたことは、米国においても様々な点で変化をもたらし始めていた。もともと国土の広い米国では鉄道利用率は比較的高かったはずだが、それに加えて発電所などの燃料における石炭への需要が高まった事があると思う。アメリカではアパラチア山脈で大量に石炭が取れるのであり、電力会社などがコストの安い石炭発電(割と簡単に発電所は作れるようだ)にシフトし始めた結果、遠い炭田からの安い石炭輸送ニーズが増えたと思われる。 オバマ大統領は全米鉄道網計画を打ち出すなど、鉄道フレンドリーだ。その意味ではこれからモーダルシフトを超えた鉄道シフト(旅客も含めた)が来るのではないか、という読みなのだろう。そしてそのうち政府がある程度出資してくれるのだと思う。つまりある程度お上のお墨付きがある。米国の鉄道はかつて過剰設備を廃棄して設備投資も控えていたため、設備の老朽化も激しいが、これらについて公的なバックアップのもとで設備増強が考えられるのである。さらに、他にも鉄道会社がある中でBNSFを選んだのは、この会社が特に米国西部に強みを持つからだろう。それはバフェット氏がやはりアジア市場と米国市場のリンクを考えた場合、西海岸からの貿易量が今後増える事を想定しているからだと思う。 バフェット氏の頭の中にはすでにおおよそ事態の発展シナリオと収支の目算が描かれているのだと思う。しかし、それ以上にこの案件が象徴的なのは、米国にとっての鉄道の位置づけに絡むものだと思う。 西部開拓時代から鉄道はフロンティア魂のシンボルであり、未知の領域を切り開くアメリカ人の根っこの部分にかかわっていると思う。この時期340億ドル(3兆円でっせ・・・)もの大金を投じたのは、あくまで個人的推測だが、純粋な収支計算を少し越えた部分があると感じる。アメリカ人として、開拓魂を思い出し、恐れずに明日に向かって行こう、というメッセージがこめられているのだと思う。ウォールストリートジャーナルに掲載された彼のコメントは「何よりも重要なのは、これが米国経済の先行きに対するすべてをこめた賭けだということだ(It’s an all-in wager on the economic future of the United States)」というものだった。なによりも、これまでのポートフォリオの規模からみた今回の案件の大きさが目を引く。分散投資を信じる人々からすれば、ちょっと信じられない偏り方になる。先ほどのコメントといい、その大きさといい、今回のバフェット氏のアメリカ復活への意気込みが伝わってくる。余計な事だがスタンダード&プアーズなどの格付け会社ももともと(当時ブームとなった)鉄道債券の信用調査からスタートしたのだった。鉄道はその意味でアメリカ産業と金融との両方において出発点のイメージがある。 日本ではどうしてこのような大胆な投資をする会社が出てこないのか?いや出てはいるのだ。たとえば東芝のウェスチングハウス買収などがそうだ。ただ、あれは事業会社の事業目的買収であり、投資会社がその資金の大半を投じて一社の支配株主になるまで大きく買いこすなどというのはかなり少ない。せいぜいライブドアがそれに近い事をやろうとしていたという程度か。それでもこれほどまで夢を感じさせるやりかたでの投資はなかなか見られない。やはり目の付け所が違うと思う(結果としてどうなるかはわからないけれど)。 |
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ちょうど今週の日経ヴェリタスにもファンドが取り上げられてましたけど、日米では投資ファンドの規模や数などの厚みに差が大きいですから、ちょっと無理なのでは? |
39歳無職 2009/11/05 17:13 |
39歳無職さん、どうもです。それにしても、今回のはちょっと大きすぎるような気がしますね。本当にすべてを賭けた(勝算充分にアリですが)? |
厭債害債 2009/11/06 21:32 |
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