ちょっと怖い話をしたい。東京の知人が東南アジアに旅行したときに遭遇した災難だ。麻薬密輸の現行犯で逮捕された。知人は麻薬を運ばされているとは知らなかったのだけれど裁判で死刑判決が下された
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向こうの空港で、見知らぬ男に「楽器を日本の友人に届けてほしい」と頼まれたという。知人は謝礼として現金を受け取った。その楽器の中に麻薬が隠されていた。知らないと言っても、信用してもらえなかった
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日本のNGOや現地の弁護士が努力したかいがあり、知人は数年にわたる拘禁を経て最近釈放され、日本に帰ることができた。軽率な行為ではあった。言葉も法律も異なる国で、長いこと死と隣り合わせだった心細さはいかばかりだったかと思う
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外務省によると、特にアジアや欧州で犯罪に巻き込まれる日本人が増えている。置引や詐欺、強盗、薬物、性的暴力…。手口はさまざまだ。肩ひじを張って過ごしたのでは旅もつまらなくなるけれど、油断すると時間もお金も台無しになる危険があることは忘れたくない
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自身の体験を一つ。米国東部にある大学で、ホタルを眺めながらビールを飲んでいたら警官2人に連行された。屋外で酒を飲んではいけなかったのだ。罰金を納め、釈放してもらった。どの国にも宗教や文化、風習に基づくルールがある。事前に学んでおくことは旅を楽しく、豊かにする第一歩となる。