太郎 えっ、法の支配? なにそれ、怖い。
後藤 えっ、怖い?
太郎 怖いすよ。だいたい法ってろくなことないじゃないすか。既得権益を守るために新規参入を阻む壁、みたいな。
花子 そうそう、法とは私たちの自由を奪う細かなルール、そんなイメージです。振り返れば、中学生の頃も校則で決まっているからと、スカートの丈短くしすぎるなとか靴下のワンポイントはダメだとか、学校に漫画やカセットテープ持ってくるなとか、いろいろ細かいこと言われたし、見つかるとぐちぐち言われたし。
太郎 ちょ、先輩、カセットテープって、何のため?
花子 あのね、その頃は音楽をやりとりしようとしたらそれしか方法がなかったの!
後藤 それで花子さんは罰せられましたか?
花子 いえ、私は可愛かったので、見逃してもらいました。
太郎 やめましょうよ先輩、そういう冗談は。
花子 冗談じゃないってば。
後藤 真偽のほどは別として、その方がこわいでしょう。
花子 えっ、どうしてですか。
後藤 法の支配の反対語、なんだかわかりますか。
花子 法の支配の反対ですか。なんだろう。わかりません。
後藤 法の支配の反対語は、人の支配です。
太郎 ちょっとマジ難しくなってきたんすけど。どういうことすか?
後藤 日本は法の支配の下にある国家です。日本国憲法とそれに基づいて整備された法律や制度の下に、政治は行われなければなりません。憲法、法律、制度、どれをとっても、政権が変わったからといって、確固たる理由もなく、また、正当な手続きも踏まず、その解釈や運用が変わる国は、法の支配の下にあるとは言えません。
太郎 はあ、そうすか。
後藤 花子さん、あなたの通っていた中学校で、校則よりも先生の気分や、真偽のほどは別としてあなたの可愛らしさが優先されていたのであれば、それは法の支配ではなく、人の支配の下にあった学校です。その先生はもしかすると、学校を牛耳ってはいませんでしたか?
花子 そう言われるとそうだったかも知れません。しかし、そんなこと考えたこともなかったです。
後藤 法というのは、国民を守るためにあるのですよ。
花子 ええーっ、そうだったんですか。びっくりです。
太郎 マジ驚愕。
後藤 私はあなたがたがそんなに驚くことに、びっくりです。
花子 法は何から国民を守るんですか。
後藤 国家権力や犯罪者など、他人の権利・自由を侵害する者からです。
花子 そうだったんですか。これまで、日本は民主主義の国とは習ってきたし、知ってもいたけれど、法の支配の下にある国家っていう意識は希薄でした。
太郎 法って、空気みたいなもんなんすかね。あ、いま自分、うまいこと言っちゃってます?
(次回は5月17日に掲載の予定です)