東国原英夫知事は11日、家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)問題で川南町を視察に訪れ、町対策本部や陸上自衛隊第43普通科連隊、殺処分の現場で作業従事者を激励した。
現地入りは先月末に続いて2度目。川南町によると、町内で常時飼育されていた豚約14万頭、牛約1万頭の半数が既に感染。押川義光・町農林水産課長は「食い止めないと町の畜産はなくなってしまう」と訴えた。
知事は約1万5700頭が疑似患畜となったJA尾鈴の養豚農場で今回初めて、殺処分と埋却作業の様子を視察。町役場に戻った知事は記者団に「想像を絶する現場だった。本当に大変で、焦燥感が伝わった。炭酸ガスで数十頭が殺処分されていたが、動物が死んでいくのを見るのは……」と表情を曇らせた。
また、女子プロゴルフの横峯さくら選手がワールド・サロンパス・カップで獲得した賞金1200万円全額を県に寄付する意向であることには「善意と優しさが農家に十分に伝わると思う。感謝したい」と述べた。【石田宗久】
知事は11日午前、県議会全員協議会に出席し、農家に対する当面の生活費支援などで新たな補正予算を専決処分で計上する考えを明らかにした。無利子融資で調整している。
全協は先月26日以来で、知事は冒頭「感染が拡大しており予断を許さない状況。全庁を挙げて防疫を徹底したい」とあいさつ。児湯地域から離れたえびの市など、特徴的な感染事例が報告された。県畜産試験場で初めて豚への感染が確認されたことに高島俊一農政水産部長は「大変大きな衝撃を受けた。ざんきに堪えずおわび申し上げたい」と述べた。
議員からは、収入源を失った農家の生活支援を求める意見が相次いだ。知事は県独自で生活費の支援制度を設ける考えを示し、出産や出荷の遅れで増える牛、豚向けの簡易畜舎を貸し出すことを提案した。
11日朝にはえびの市では3例目となる感染が確認され、同市選出の中野一則議員は「申し訳ないが、川南町の『二の舞い』になりはしないか。今のやり方では手遅れでは」と懸念を表明。殺処分が追いつかない現状に「末端まで指揮命令が届いていない。発症したまま何日も放置されている」といらだちを見せた。
知事は「10年前と規模は雲泥の差。現場も戸惑い、混乱していると聞く。組織の見直しを指示した」と理解を求めた。【石田宗久】
毎日新聞 2010年5月12日 地方版