生体イメージングのための新型顕微鏡開発
白色光源を用いた高速共焦点顕微鏡の開発
共焦点蛍光顕微鏡の光源は一般的にはレーザーを使用します。このため、レーザーの発振波長により使用する蛍光分子が限られてしまう、装置の値段が高くなる等の問題があり幅広い研究者の利用を阻む理由となっています。そこで我々は水銀光源を使用した共焦点蛍光顕微鏡システムを構築しました。作成された顕微鏡はレーザーを使用したものと空間分解能は変わらないまま、蛍光色素選択については非常にフレキシブルになりました。このシステムを利用し、同一細胞内で複数の生理現象を同時に可視化する事も行っております。図はHela細胞にHistamine刺激を与えた際の細胞内Ca2+上昇(上段)とProtein Kinase Cの細胞膜移行(下段)を観察したものです。
超迅速なゲノム配列決定法の開発
DNA塩基配列の解読は、1970年代にサンガー法やマクサム・ギルバート法の発明により実現化し、現在でもこれらを改良した方法が用いられています。しかし、こうした方法は技術的な飽和状態を迎えつつあり、従来の方法の延長で次世代型シーケンサーを実現することは困難であると考えられています。 本研究では、解析対象DNAに対しプローブが連続的に取り込みと削除を繰り返す様子を1分子観察し、これによりDNAの塩基配列を超並列的かつ超迅速に解読することを目指しています。次世代型DNAシーケンサーの実現は、ゲノム研究の加速やテーラメード医療、癌の早期診断など、様々な分野で多大な貢献が期待されます。 DNAへのプローブ取り込み反応を実現するために、プローブの配列や酵素の組み合わせ、反応条件などを検討した結果、DNAに対するプローブの連続的取り込み反応を試験管内で起こすことに成功しました。また、解析対象DNAとプローブDNAとの反応をガラス基板上で高効率に実現するために、DNAのガラスへの固定方法、溶液の組成、反応温度、プローブの種類などの検討を重ねました。水和性の高い分子でガラス表面をコーティングし、適度な長さのリンカーを介して解析対象DNAを共有結合させた際に最も高い効率で反応が検出され、ガラス表面上へのプローブの非特異的な吸着も抑制されました。また、ガラス表面上でこのような反応を起こすために絶対的に必要な金属イオン強度を特定しました。 本手法では、DNAの4塩基に対応した4種類のプローブを1分子レベルで検出する必要があり、これを実現するための様々な光学系も検討しました。全反射照明装置と高速フィルターチェンジャー、高感度カメラを組み合わせることにより、解析対象DNAに取り込まれた4種類の蛍光プローブを1分子レベルで見分けることが可能になりました。このようにして検討した条件を元に、ガラス表面上に固定したDNAに対して4種類の蛍光プローブと各酵素を加えて反応させ、DNA解読反応を持続的に観察することに成功しました。 一連の実験結果から、連鎖反応の速度は1塩基/分・分子 と推定されました。これは1万分子を同時に観察した場合、1万塩基/分の性能に相当します。このことから、全く新しい原理に基づく塩基配列決定法が既存の技術の効率を大幅に超えることを示唆する結果を得たと考えました。