2010年3月15日 15時21分 更新:3月16日 0時20分
水俣病の未認定患者団体「水俣病不知火(しらぬい)患者会」(熊本県水俣市)が国と熊本県、原因企業チッソ(東京)に損害賠償を求めた訴訟の和解協議で、熊本地裁(高橋亮介裁判長)は15日、和解案の大枠となる「所見」を示した。患者に支払う一時金は210万円。療養手当も含め、旧与党プロジェクトチーム(PT)の提示額を上回った。患者会は28日の原告総会で対応を決め、国側とともに29日の次回協議で裁判所に回答する方針。
この内容で和解が成立した場合、政府は昨年7月に成立した水俣病救済特別措置法の具体策として取り込む。
政府は政権交代後に従来の係争方針を改め、5月1日に水俣市である水俣病犠牲者慰霊式までの救済開始を目指し、和解協議に入っていた。今後は、既に特措法受け入れを表明している「水俣病出水の会」(鹿児島県出水市)などの患者団体とも、地裁の所見をベースに内容を協議する。
小沢鋭仁環境相は「受け入れ可能か十分検討した上で関係省庁等と調整したい。訴訟をされていない団体との協議も速やかに行い、全面解決を目指すという基本的な考え方に立って検討を進めたい」との談話を発表した。チッソは「今後慎重に検討した上で和解協議の場で意見を申し述べたい」とコメントした。
一時金については、患者会は水俣病関西訴訟最高裁判決(1人400万~800万円)並みの支給を求めている。これに対し、国側は「07年に旧与党PTが示した150万円と、95年の政治決着時の260万円の間」と主張。原告の求める額を下回っているが、療養手当で配慮したとみられる。【西貴晴、遠山和宏、大場あい】
◆熊本地裁が示した和解案の骨子◆
▽対象者の判定方法
・原告と被告で設置する第三者委員会が判定
・共通診断書と第三者委員会の診断書の両方を使う
・出生年や対象地域などは、国が和解協議で示した案※に基づく。他は委員会運営協議会で決める
※へその緒などで胎児期から体内に水銀が存在したことを示す科学的データがあれば1969年以降生まれも候補とする。地域は熊本、鹿児島両県の3地区を追加
▽支給内容
・チッソは一時金1人210万円を支払う
・国、県は療養手当として▽入院者=1万7700円▽70歳以上の通院者=1万5900円▽70歳未満の通院者=1万2900円(いずれも月額)を支払う。医療費は特措法の水俣病被害者手帳を給付する
・チッソは一時金に加え原告団体に29億5000万円を支払う
▽その他
・チッソ、国、県は責任とおわびの具体的な表明方法を検討する
・2010年内にその他の訴訟の放棄、認定申請取り下げなどの解決措置を終結させるよう努力する