輸入義務米:1096トン廃棄 汚染米事件後、活用できず

2010年3月15日 15時0分 更新:3月15日 15時58分

輸入義務米の廃棄量※数字はトン。小数点以下を四捨五入しているため、廃棄量は袋ごとの合計と合わない
輸入義務米の廃棄量※数字はトン。小数点以下を四捨五入しているため、廃棄量は袋ごとの合計と合わない

 今年1月までの1年間に、カビが生えたりして廃棄された輸入義務(ミニマムアクセス)米が1096トンに上ったことが農林水産省のまとめで分かった。日本人約1万9000人の年間消費量に相当する。汚染米転売事件を受け、食用に適さない米の工業用のり原料などへの転用をやめたためだ。専門家からは「流通管理を徹底し、有効活用すべきだ」との指摘が出ている。

 輸入義務米は、ウルグアイ・ラウンドの合意に基づき、95年から輸入が始まった。年間約77万トンを輸入するが、農水省は昨年2月から、すべての袋(1トンまたは30キロ)について点検し、カビなどが見つかれば袋ごと焼却処分している。処分された米の購入費は約7700万円にあたり、焼却費用は1トン当たり4000~6万円かかるという。

 廃棄米は昨年3月が245トン、同4月は222トンにも上った。陸揚げ時の品質確認を強化した同9月以降、廃棄量は徐々に減少したが、保管中のカビの発生などを完全に防ぐのは難しいという。

 大量廃棄の背景には08年9月に発覚した汚染米転売事件がある。大阪市の米卸売加工会社や名古屋市の接着剤製造会社などが、カビや農薬が検出された事故米を農水省から工業用のり原料として安く購入しながら、食用と偽って不正転売し、菓子や焼酎の原料などに使われた。

 事件後、農水省は再発防止策として、工業用のり原料としての提供をやめ、廃棄を決めた。幹部は「事件で食への不安が広がっただけに、もったいないが仕方ない」と話す。

 食品問題に詳しい垣田達哉・消費者問題研究所代表は「横流しの防止措置をきちんと行うことが先決。簡単に廃棄するのではなく、バイオ燃料の原料への活用なども考えるべきだ」と指摘している。【奥山智己】

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