ろうそくデモ2年:「ネット上のデマにだまされた」(上)

 「あのときは米国産牛肉を食べるだけで死ぬと思い、行動していた。しかし今になって考えてみると、なぜあんなことをしたのか理解できない」

 2年前、5歳の娘を連れて毎日のようにろうそくデモに参加していた主婦キム・ミジャさん(仮名、34)。ソウル市北部の道峰区に住むキムさんは、6日に本紙の取材に応じ、「あのときなぜあんな行動をしたのかよく分からない。何かに目を遮られていたようだ」と話し、むなしい笑みを浮かべた。当時はデモに参加するため、夫の夕食も満足に準備できなかったというキムさんは、狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)について聞いた話がどれも根拠のないデマだったことを知り、「だまされたようにも感じる」と話した。

 ごく平凡な主婦までもデモの現場に駆り出したのは、テレビ番組とインターネットだった。2008年4月29日、キムさんはMBCの時事番組『PD手帳』を見て、後ろから突然頭を殴られたような衝撃を受けたという。画面には病気の牛がふらつき、倒れ込む場面が映し出されていた。

 ネットで検索すると、「米国産牛肉を食べると脳に穴が開いて、最終的には死に至る」「生理用ナプキンや粉ミルク、キャンディーも危険」という書き込みが目に飛び込んできた。キムさんは、「こんなに危険で使い道のない肉を輸入しようとする李明博(イ・ミョンバク)政権への憎悪が込み上げ、今すぐ弾劾したいという気持ちになった」と語る。

 そこでキムさんは同じマンションに住む主婦たちに、ろうそくデモに参加するよう呼び掛けた。1週間に2回から3回、多いときは町内の主婦たち15人が集まって地下鉄に乗り込み、ソウル・光化門で「李明博は退陣せよ」と力一杯シュプレヒコールを叫んだ。当時5歳だった娘も、3回以上同行した。

2年前のろうそくデモで「ベビーカー部隊」に加わっていた主婦ハンさんは10日、蔚山市内の自宅からインターネットで牛肉を注文した。ハンさんは「ネット上の書き込みは、科学的な事実とは異なるようだ。今後ろうそくデモが起こっても、子どもを連れて参加したりはしない」と話す。/写真=キム・ヨンウ記者

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朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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