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社説:口蹄疫感染 拡大防ぎ、原因究明急げ
宮崎県で家畜感染症の口蹄(こうてい)疫が拡大している。殺処分される牛や豚が計6万匹を超える過去最悪の深刻な事態だ。感染拡大を食い止めるとともに、感染ルートの解明、原因の究明を急がなくてはならない。
口蹄疫は豚や牛、羊など偶蹄(ぐうてい)類の家畜や野生動物に感染するウイルス性の病気。発症すると口と蹄(ひづめ)に水疱(すいほう)ができて発熱、やせ細って死ぬこともある。ヨーロッパ、アジア、アフリカなどで発生が報告され、各国は厳しい防疫態勢を取っている。日本では1908年の発生時に東京などで計約500頭、2000年には宮崎県で35頭、北海道で705頭の牛が処分された。
感染拡大は早いペースで進行している。4月20日に1例目となる疑い例が見つかってから20日足らずで、処分対象とされた家畜数が6万匹を超えた。豚への感染疑いは国内では今回が初めてで、5万匹以上を占める。
発生後、同県のほか隣接する熊本、鹿児島両県の一部で家畜の移動を制限。国庫負担による消毒薬散布を、大分、熊本、鹿児島を合わせた計4県で実施している。
宮崎県での口蹄疫発生を受け、本県では4月21日から県内の全畜産農家を対象に県が聞き取り調査を実施。その結果、牛や豚などに異常のある農家はなかった。それでも「2000年の国内発生時よりも感染力が強い」と警戒を緩めず、県内3家畜保健衛生所が畜産農家や関係団体に逐次情報を伝達するとともに、注意を呼び掛けている。
赤松広隆農相は10日、宮崎県庁を訪れ、東国原英夫知事と対応策を協議した。戸別所得補償制度の周知と加入促進PRのために予定していた本県訪問を延期しての会談だ。
赤松農相は、感染拡大防止のため家畜を処分された農家に対し、全額補償の実施を表明。防疫態勢確保のため、獣医師を倍増し、九州農政局からの職員派遣の増員などを打ち出した。
赤松農相の宮崎県入りは4月に感染疑い例が見つかってから初めて。同県内で日に日に感染が拡大する中、大型連休中はメキシコやキューバなどを訪問していた。緊急事態が進行する中での農相不在は、その危機管理意識の希薄さが問われよう。発生後3週間たってからの現地入りに対し、遅過ぎるという声があるのは当然だ。
宮崎県は10年前の口蹄疫、07年の鳥インフルエンザ、そして今回と畜産の感染症発生被害が続いている。牛や豚の処分を余儀なくされる畜産農家の心痛のほどが察せられるが、何とか他県への感染拡大を食い止めてほしい。
口蹄疫に感染した牛や豚の肉を食べても人に影響はない。風評被害を防ぐことも大切だ。
同時に、原因の解明を急ぎたい。餌や家畜の輸入経路などの検証も必要だ。効果的な感染拡大防止策を打ち立て、早期終息を図るためには欠かせない。
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