「何が何でも県外移設」を主張する鳩山さんの空理空論(田原総一朗=ジャーナリスト
2010年5月10日 リベラルタイム
僕は鳩山(由紀夫総理)さんという人をよく知っているつもりでいたが、それは、実像と相当乖離があったということを最近知った。米軍普天間飛行場の移設問題の迷走劇を考えてみたい。
昨年の衆議院選挙中から鳩山さんは「普天間飛行場を県外、国外に移したい」と何度も述べていたが、閣僚からホワイト・ビーチの沖合案、キャンプ・シュワブ陸上案、鹿児島県の徳之島案等が出てくる。昨年の十一月には、北沢(俊美防衛大臣)さんと岡田(克也外務大臣)さんは、「当初案の辺野古沖への移設がいいのではないか」と語っていたし、現にいま辺野古沖案が再浮上している。
こうした経緯を見て、僕は鳩山さんという人は、考えに相当ブレがあると思った。ところが、鳩山さん自身は初めから、移設先についてはまったく変わっていなかった。日本にある米軍基地の七五%が沖縄県にあるという現状を改善、打破したいとひたすら考えていたのである。
沖縄県の負担が重過ぎるので、県民に迷惑をかけたくない。したがって、沖縄以外のところに移設先を持っていきたいと、思っているのだ。
徳之島案にしても、四月十八日には、人口約二万六千人の徳之島に奄美群島等から、約一万五千人が参加して、移設反対集会が開かれた。地元選出衆院議員、鹿児島県知事、徳之島町長、天城町長、伊仙町長はことごとく移設に反対である。
しかし、鳩山さんから見れば、妨害行動が行われているとしか思えない。
「僕はこれ以上、沖縄に迷惑をかけたくない。マスコミも、党内も、なぜ僕の思いがわかってくれないのか。日本の米軍基地の大部分が沖縄にあるのに、さらに米軍基地を沖縄に置いていいのか。なぜそれをわかってくれないのか」
という苛立が生じ、鳩山さんの口から「メディアがいろいろ動き過ぎて」等とマスコミ批判の言葉が出ることになる。
「ぜひ県外に」と考える鳩山さんに、周辺が「その案にはリアリティがない。現実論ではない。空理空論だ」というと、「僕は一貫して県外と主張している。何を根拠に空理空論というのだ。県民に迷惑をかけたくないので、全力を尽くして県外移設を実現したいと思っている。マスコミは、なぜくだらないことばかりいっているのか」と、鳩山さんが思っていると考えなければ、普天間飛行場移設問題の現状は理解しがたい。
当面、普天間飛行場は現状のままで、多少時間はかかるかもしれないが「徳之島島民と必死に交渉する」ということなのだろう。
内閣の支持率低下もマスコミが鳩山さんの思いを伝えないので、国民が誤解をして、下がっているだけだ。鳩山さんの思いが伝われば、支持率は戻ってくる、と鳩山さんは考えているのである。
鳩山さんという人物は、そういう人ではないか。でなければ、普天間問題における現在の迷走は、まったく理解不能である。
一方、「一年間は総理をやりたい」と鳩山さんがいったといわれる報道があるが、一年と区切るのは、鳩山さんが総理の座に執着しないということかも知れない。
リベラルタイム6月号 「this month!」
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。
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