昨年9月高知市で、同市神田の銀行員、池内伝一郎さん(当時57歳)を乗用車ではねて逃走し、死亡させたとして自動車運転過失致死罪に問われた同市旭天神町、無職、真鍋一志被告(37)の論告求刑公判が10日、高知地裁(安西二郎裁判長)であり、検察側は「卑劣この上なく、言語道断な行為」として懲役5年を求刑。弁護側は「被告は真摯(しんし)に反省しており、ぶつかったのは電柱だと思っていた」と減刑を求めた。判決は来月28日。
起訴状によると、真鍋被告は昨年9月11日午前1時ごろ、高知市上町2の市道を乗用車で走行中、池内さんをはね、頭の骨を折る重傷を負わせたまま逃げ、同17日に死亡させたとされる。被告やその同僚は、事故の約2時間前まで飲酒したことを認めているが、検察側は客観的証拠が足りないとして危険運転致死罪の適用を見送っていた。
この日、被害者参加制度に基づき遺族が意見陳述した。池内さんの妻の由美子さんが「主人は電柱なんかじゃない。被告は自分の意思で酒を飲み、自分の意思で運転した。それを過失と言えますか」と訴え、前日までに集めた2万2393人分の署名を同罪適用を求める嘆願書と共に提出した。被害者側の弁護士は「真摯な反省は見られない」として、懲役15年が相当と主張した。
傍聴席には9日、高知市で同罪の適用を求める署名活動を行った「飲酒・ひき逃げ事犯に厳罰を求める遺族・関係者全国連絡協議会」の中島直人さん(38)=愛知県春日井市=の姿も。4年前、タクシーを運転していた父親が、飲酒運転の乗用車に衝突され死亡した。公判後、中島さんは「遺族を傷つけるような求刑ではないか。5年で果たして罪を償えるのか」と沈痛な面持ちで話した。【倉沢仁志】
毎日新聞 2010年5月11日 地方版