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【長野】

凍りつく氏子や観衆 御柱中、転落事故で死傷者

2010年5月9日

御柱から氏子が転落する事故があり騒然とする現場周辺

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 「まさか」「なぜ」−。諏訪大社御柱祭の最終幕、下社里曳(び)きが始まった8日夕に起きた建(たて)御柱中の転落事故。死傷者が出る最悪の事態に、氏子や多数の観衆は凍りつき、祭りムードを一変させるほどの衝撃が走った。神社や総代、観光などの関係者は対応に追われ、県警は事故原因の究明を急いでいる。祭りは予定時間を大幅に遅れ、深夜に予定の曳行を終えた。諏訪地方観光連盟の発表でこの日の観衆は14万6000人。

 「どいて!」「道を空けて!」。突然の事故にぼうぜんとする観衆を氏子が必死にかき分け、けが人を乗せたたんかを通す。駆けつけた救急隊員は「大丈夫ですか」と何度も声を掛ける。祭りの盛り上がりから一転、境内はどよめきと緊迫感に包まれた。

 柱がもう少しで垂直になろうとする時だった。「ブチン」という音がして柱が揺れ、バランスを崩した3人が17メートルの高さから落ちた。境内に入れず遠巻きに祭りを見ていた観衆も「人が落ちたみたいだ」「事故だぞ」とささやきあい、背伸びして人込み越しに柱を注視した。

 柱のすぐ近くで事故を目撃した岡谷市の主婦(53)は「柱には息子(26)が氏子として乗っており、巻き込まれたのではと一時、心配もした。みんなの晴れの舞台だと思って楽しみに見ていたのに大変なことになった」と声を詰まらせた。

 氏子の男性は「御柱からのびたワイヤのうち1本のフックが外れたかと思ったら、上の人が落ちていた」と振り返った。

 祭り初日のハイライトを一目見ようとする大勢の観衆も事故に驚いた。東京都世田谷区の自営業男性(41)は「音の後に人がバラバラと落ちた。一瞬のことだった」と困惑した表情だった。

 春宮一の曳行責任者は「ワイヤの異常が事故の原因だと思う。命綱は腰に巻くものだが、3人は手で持っていたんだと思う。今まで散々柱に乗ってきた人なので少し安心したのではないか」と話した。

 御柱祭下社里曳きの曳行責任者、下社三地区連絡会議の宮坂隆平会長(68)は9日以降も予定通り祭りを実施する方針を明らかにした。

 事故の3時間後、取材に応じた宮坂会長は、予定通り実施することについて「以前から決まっていること」と話した。建御柱の際、御柱に氏子を乗せるかどうかについては「各地区の判断に任せる。乗る場合はしっかりベルトを着けるように再度指示をする」と話した。

 一方、諏訪大社は「祭りは氏子の奉仕。判断は氏子による」と話していた。

 諏訪御柱祭では、過去にも死者や重傷者が出る事故が起きている。県警によると、1968年以降、前回2004年までの御柱祭の死者は6人、重傷者は31人。直近の死亡事故は1992年の下社山出し。春宮一之御柱の木落しで、いきなり滑り落ちた柱で頭を打った男性1人が死亡。建御柱では80年の上社で、ワイヤの異常で本宮一之御柱が倒れ、1人が死亡している。

 県内では今年4月、千曲市の古大穴神社で建御柱中の柱が倒れ、1人が死亡、3人が重軽傷を負う事故があった。

 (御柱祭取材班)

 

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