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2010.05.11
米軍訓練 全国分散 混乱拡大 普天間移設、決着先送り確認
カテゴリ沖縄問題 出典 産経新聞 5月11日 朝刊
記事の概要
政府は10日、普天間移設問題をめぐる関係閣僚会議で、キャンプ・シュワブ沿岸部の沖合に杭打ち桟橋(QIP)方式で滑走路を建設する浅瀬案と、徳之島など県外への訓練移設案を柱とする政府案を固めた。
ただ米政府や地元自治体の理解を得ることが絶望的なため、最終決着を5月末以降に先送りする方針を確認した。
全国自衛隊基地で訓練分散を検討しているが、徳之島では強い反対にあっており混乱拡大が予想される。
この日の協議では、シュワブ・浅瀬案と徳之島への訓練移転に加え、@米軍の普天間と嘉手納の飛行訓練を全国の自衛隊で実施する A鳥島・久米島の射爆場の返還や、沖縄本島東側の米軍訓練水域の一部返還 B日米地位協定の見直しーーといった沖縄の負担軽減策を示し、地元の理解を得る方針を確認した。
平野官房長官は10日午後の記者会見で、「(5月末に)具体的な技術面など細部を詰めるのは大変難しい」と指摘。前原・沖縄対策相も「地元の理解を得るためにの不断の努力は5月を越えてでもやっていかなければならない」と述べ、6月以降も米側や地元の協議を続けるべきだと強調した。
首相は米側との負担軽減策を継続協議していることを理由に5月末を乗り切る意向とみられるが、5月末決着に「職を賭す」と明言したこともあり、首相の政治責任が厳しく問う声が強まるのは確実だ。
政府は12日に、ワシントンで米側と実務者協議(防衛・外務の担当者)を開き、米側との交渉加速を図る。
政府は10日、普天間移設問題をめぐる関係閣僚会議で、キャンプ・シュワブ沿岸部の沖合に杭打ち桟橋(QIP)方式で滑走路を建設する浅瀬案と、徳之島など県外への訓練移設案を柱とする政府案を固めた。
ただ米政府や地元自治体の理解を得ることが絶望的なため、最終決着を5月末以降に先送りする方針を確認した。
全国自衛隊基地で訓練分散を検討しているが、徳之島では強い反対にあっており混乱拡大が予想される。
この日の協議では、シュワブ・浅瀬案と徳之島への訓練移転に加え、@米軍の普天間と嘉手納の飛行訓練を全国の自衛隊で実施する A鳥島・久米島の射爆場の返還や、沖縄本島東側の米軍訓練水域の一部返還 B日米地位協定の見直しーーといった沖縄の負担軽減策を示し、地元の理解を得る方針を確認した。
平野官房長官は10日午後の記者会見で、「(5月末に)具体的な技術面など細部を詰めるのは大変難しい」と指摘。前原・沖縄対策相も「地元の理解を得るためにの不断の努力は5月を越えてでもやっていかなければならない」と述べ、6月以降も米側や地元の協議を続けるべきだと強調した。
首相は米側との負担軽減策を継続協議していることを理由に5月末を乗り切る意向とみられるが、5月末決着に「職を賭す」と明言したこともあり、首相の政治責任が厳しく問う声が強まるのは確実だ。
政府は12日に、ワシントンで米側と実務者協議(防衛・外務の担当者)を開き、米側との交渉加速を図る。
コメント
いよいよ鳩山政権が最後の切り札を出してきた。これが鳩山政権の最後の最後の「腹案」であると思った。
昨日の関係閣僚会議には、鳩山首相、平野官房長、北沢防衛相、岡田外相、前原沖縄相の他に、この会議の陰の主役にあたる小沢幹事長の指示が届いていたはずである。
そのことを窺わすのは、従来の「杭打ち桟橋案」と「徳之島移設」に加え、3つの新たな方針を関係閣僚が確認したことである。この知恵(最後の腹案)を出した人物こそ小沢幹事長以外に考えられないからだ。
まず、Aの鳥島・久米島の射爆場の返還については、全国には米軍基地でありながら使用されていない休眠施設(地)がいくつも存在している。そのうち、米軍が精密誘導爆弾などの普及で、もう必要ではなくなった沖縄の射爆場の返還を思いついていることだ。これでも沖縄の米軍基地負担が演出できる。
まあ、この程度の軍事知識ならば、前原沖縄相でも思いつく沖縄の負担軽減策である。
しかし@に関していえば、小泉元首相とブッシュ前大統領の「米軍再編」をめぐる米国防省、米国務省、防衛庁(当時)、外務省の、当時の主導権争いを知らなければ浮かばないアイディアである。
これを簡単にいえば、米国防省は前方展開戦略の負担の重さから、韓国、日本、ドイツなど、米国以外に米軍を配置した前方展開部隊の本国(ハワイやグアムを含む)撤退を求めた。これに対して、外務省や国務省は政治的な米軍の存在感(プレゼンス)が激減することを理由に、米軍部隊の撤退に強く反対する。防衛省は在日米軍の役割を自衛隊が肩代わりすることで、防衛省の勢力拡大を目指すという構図であった。
米国防省が本国撤退の代わりに示したのは、日本全土の自衛隊基地で米軍との共同訓練による米軍プレゼンスの維持である。その中には、陸海空・自衛隊をグアム、ハワイ、アラスカ、米本土などの米軍基地(演習場)に呼んで行う日米共同訓練も含まれていた。
日本の外務省にとっては、防衛省(自衛隊)が日米共同軍として日米間に台頭してくるという悪夢があった。そのため何としても、在日米軍を日本に駐留させ、今後も外務省が日米間の防衛・安全保障政策の主導権を握っておきたかった。
外務省にとって日米地位協定の改定に触れることなど、絶対に行っていけないタブーだった。
そのような”米軍再編計画”にともなう複雑な論争が日米間であったのである。
辺野古沿岸にV字滑走路を持った代替基地を作るとした現行案は、当時の防衛庁の守屋事務次官が小泉首相と組んで、米軍再編調整の議論中に外務省をねじ伏せた案だったのだ。
そのかわり陸海空3自衛隊は、極東米軍の陸海空3軍と司令部を共有して、日米共同訓練の活発化や武器の共通化で米軍の極東プレゼンスを保証することになった。その象徴が、座間(陸)、横田(空)、横須賀(海)の共同司令部なのである。
さらに昨日の追加3案で、小沢氏の存在を強く感じたのは、Bの日米地位協定の改定を挙げたことである。このような豪腕はとうてい前原氏にはできない。
今、日米安保関係にとって、アメリカが一番触れて欲しくないのが日米地位協定の改定である。これが日米間の不平等協定であることはアメリカも十分に知っているからである。
昨日は、日本の米軍基地周辺の環境(騒音公害や米兵の犯罪など)に配慮するように日米地位協定を改定すると話し合われた。これは米政府にとっては恫喝された以上の迫力がある。これは国務省や国防省など一部の者が、米軍の嘉手納と普天間の飛行訓練を全国の自衛隊基地に分散させる案に反対すれば、日本は「日米地位協定の改定に着手するぞ」というメッセージが込められている。
少なくとも、明日のワシントンの実務者協議では、このBについて米側から詳しい説明を求められるはずだ。その場合でも、ただ日本側は、「基地周辺の環境に配慮するという意味だ」だけ話せば、アメリカはそれ以上追い打ちできない。
これが小沢流の豪腕外交なのである。あくまで現行案にこだわる米政府を「日米地位協定の改定」で黙らせたことになる。
これで本当に鳩山首相の”5月末辞任拒否”が乗り切れるか。アメリカ側から小沢外交に猛反撃はないのか。そのカギを握っているのは日本の世論の動静である。
※米軍再編で日米間ではどのような交渉課程があったか、そのことを書いた「米軍再編」(久江雅彦氏著 講談社現代新書 700円)を読むことをお勧めします。日米間の政治や外交の内情をかなり詳しく書かかれています。
他にも、「米軍再編」について書いた本があります。時間に余裕のある方はできるだけ多くの本をお読み下さい。この協議は米政府内や日米間でも紆余曲折があったため、複数の本を読むことをお勧めします。本によっては内容に現状と違うことがあっても無視して構いません。
米軍再編は、国防総省内では計画や検討の段階が終了し、すでに実施の段階に移行しています。
いよいよ鳩山政権が最後の切り札を出してきた。これが鳩山政権の最後の最後の「腹案」であると思った。
昨日の関係閣僚会議には、鳩山首相、平野官房長、北沢防衛相、岡田外相、前原沖縄相の他に、この会議の陰の主役にあたる小沢幹事長の指示が届いていたはずである。
そのことを窺わすのは、従来の「杭打ち桟橋案」と「徳之島移設」に加え、3つの新たな方針を関係閣僚が確認したことである。この知恵(最後の腹案)を出した人物こそ小沢幹事長以外に考えられないからだ。
まず、Aの鳥島・久米島の射爆場の返還については、全国には米軍基地でありながら使用されていない休眠施設(地)がいくつも存在している。そのうち、米軍が精密誘導爆弾などの普及で、もう必要ではなくなった沖縄の射爆場の返還を思いついていることだ。これでも沖縄の米軍基地負担が演出できる。
まあ、この程度の軍事知識ならば、前原沖縄相でも思いつく沖縄の負担軽減策である。
しかし@に関していえば、小泉元首相とブッシュ前大統領の「米軍再編」をめぐる米国防省、米国務省、防衛庁(当時)、外務省の、当時の主導権争いを知らなければ浮かばないアイディアである。
これを簡単にいえば、米国防省は前方展開戦略の負担の重さから、韓国、日本、ドイツなど、米国以外に米軍を配置した前方展開部隊の本国(ハワイやグアムを含む)撤退を求めた。これに対して、外務省や国務省は政治的な米軍の存在感(プレゼンス)が激減することを理由に、米軍部隊の撤退に強く反対する。防衛省は在日米軍の役割を自衛隊が肩代わりすることで、防衛省の勢力拡大を目指すという構図であった。
米国防省が本国撤退の代わりに示したのは、日本全土の自衛隊基地で米軍との共同訓練による米軍プレゼンスの維持である。その中には、陸海空・自衛隊をグアム、ハワイ、アラスカ、米本土などの米軍基地(演習場)に呼んで行う日米共同訓練も含まれていた。
日本の外務省にとっては、防衛省(自衛隊)が日米共同軍として日米間に台頭してくるという悪夢があった。そのため何としても、在日米軍を日本に駐留させ、今後も外務省が日米間の防衛・安全保障政策の主導権を握っておきたかった。
外務省にとって日米地位協定の改定に触れることなど、絶対に行っていけないタブーだった。
そのような”米軍再編計画”にともなう複雑な論争が日米間であったのである。
辺野古沿岸にV字滑走路を持った代替基地を作るとした現行案は、当時の防衛庁の守屋事務次官が小泉首相と組んで、米軍再編調整の議論中に外務省をねじ伏せた案だったのだ。
そのかわり陸海空3自衛隊は、極東米軍の陸海空3軍と司令部を共有して、日米共同訓練の活発化や武器の共通化で米軍の極東プレゼンスを保証することになった。その象徴が、座間(陸)、横田(空)、横須賀(海)の共同司令部なのである。
さらに昨日の追加3案で、小沢氏の存在を強く感じたのは、Bの日米地位協定の改定を挙げたことである。このような豪腕はとうてい前原氏にはできない。
今、日米安保関係にとって、アメリカが一番触れて欲しくないのが日米地位協定の改定である。これが日米間の不平等協定であることはアメリカも十分に知っているからである。
昨日は、日本の米軍基地周辺の環境(騒音公害や米兵の犯罪など)に配慮するように日米地位協定を改定すると話し合われた。これは米政府にとっては恫喝された以上の迫力がある。これは国務省や国防省など一部の者が、米軍の嘉手納と普天間の飛行訓練を全国の自衛隊基地に分散させる案に反対すれば、日本は「日米地位協定の改定に着手するぞ」というメッセージが込められている。
少なくとも、明日のワシントンの実務者協議では、このBについて米側から詳しい説明を求められるはずだ。その場合でも、ただ日本側は、「基地周辺の環境に配慮するという意味だ」だけ話せば、アメリカはそれ以上追い打ちできない。
これが小沢流の豪腕外交なのである。あくまで現行案にこだわる米政府を「日米地位協定の改定」で黙らせたことになる。
これで本当に鳩山首相の”5月末辞任拒否”が乗り切れるか。アメリカ側から小沢外交に猛反撃はないのか。そのカギを握っているのは日本の世論の動静である。
※米軍再編で日米間ではどのような交渉課程があったか、そのことを書いた「米軍再編」(久江雅彦氏著 講談社現代新書 700円)を読むことをお勧めします。日米間の政治や外交の内情をかなり詳しく書かかれています。
他にも、「米軍再編」について書いた本があります。時間に余裕のある方はできるだけ多くの本をお読み下さい。この協議は米政府内や日米間でも紆余曲折があったため、複数の本を読むことをお勧めします。本によっては内容に現状と違うことがあっても無視して構いません。
米軍再編は、国防総省内では計画や検討の段階が終了し、すでに実施の段階に移行しています。