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事件の分類: | 賃金・昇格
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事件名: | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名: | 日産自動車賃金等請求事件 |
事件番号: | 東京地裁−昭和58年(ワ)第11430号 |
当事者: | 原告 個人7名 被告 日産自動車株式会社 |
業種: | 製造業 |
判決・決定: | 判決 |
判決決定年月日: | 1989年01月26日 |
判決決定区分: | 請求の棄却(原告敗訴) |
事件の概要: | 昭和41年9月、被告会社は、家族手当を支給する扶養家族の範囲を、原則として、配偶者については妻又は不具廃失の夫とし、子については満18才未満の子3人まで、ただし、従業員が女子である場合には夫が死亡、不具廃失の場合又は疾病のため稼動不能であって会社が特に認めた場合とする家族手当支給規程(以下、「A規程」という。)を制定した。原告等の一部はA規程の下で家族手当支給申請を行なったが、会社は支払いを拒絶した。 昭和52年5月に被告会社は家族手当の支給範囲は実際に従業員によって扶養されている配偶者及び子とするA規程の改定案を作成し、さらに、再度改定案を作成し、施行した(以下、「本件規程」という。)。本件規程によれば、一定の親族を実際に扶養している世帯主である従業員が支給対象であり、必ずしも住民票上の世帯主を言うものではなく、一家の生計の中心的担い手等により具体的、個別的に決定することとした。 原告等は、本件規程の下でも社会通念上世帯主は男性であるとか、女性は主たる生計の維持者ではないとの理由で支給申請を拒否されたため、東京都の「職場における男女差別苦情処理委員会」に苦情を申し立てたところ、被告会社は原告Fのみが夫の収入を上回っていたことから、同原告に家族手当を支給した。 原告らは、 ・A規程の支給制限条項は、女子従業員を差別的に取り扱うものである、労働基準法4条及び民法90条に違反し無効。 ・本件規程の世帯主とは、住民票上の世帯主であると解するのが妥当であり、その圧倒的多数が男性であるという事実から、右は女性を支給対象から排除する差別的取扱いであり、労働基準法4条及び民法90条に反し無効。 ・世帯主は収入の多いほうであるとする会社の運用も、共働き夫婦のほとんどの場合女性のほうが男性より収入が低いという現状に鑑み、女性を差別する取扱いである。 ・女子従業員が申請したときにのみ夫の収入証明や家族手当不支給証明を提出させることは、女性に対する差別的取扱いである。 等と主張し、不支給分の家族手当請求権、損害賠償請求権及び慰謝料請求権等を有するとして、被告会社を提訴した。 |
主文: | 原告らの請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告らの負担とする。 |
判決要旨: | 本件家族手当は、就業規則をなす諸手当賃金規則及びその細則たる家族手当支給規程において、その支給条件が明確に規定され、これによって、被告会社が、扶養家族の存在等一定の要件を備えた従業員に対し家族手当の支払を約しているものであって、任意的、思惟的に支払うものではないことが明らかであるから、労働基準法11条の「の対償」としての賃金に当たるものである。
本件家族手当は、同115条により2年の消滅時効にかかることから、昭和56年10月分までの家族手当請求権は仮にその発生が認められるとしても、時効により消滅する。
被告会社の家族手当は、扶養家族の数が増加するに従って、第2、第3被扶養者の手当額を減額しておく方式をとっており、かかる制度の下では、一方の配偶者が無職である者との公平を確保するため及び支給事務の煩雑化を避けるために支給対象を夫婦のいずれか一方に絞ることはやむを得ない。 本件規程及びその運用が不当なものでなく、原告等に家族手当請求権がない以上、右の不当な侵害を前提とする損害金、慰謝料等の請求は理由がない。 |
適用法規・条文: | 07:労働基準法3条 07:労働基準法4条 07:労働基準法11条 07:労働基準法115条 02:民法724条 02:民法90条 01:憲法14条 |
収録文献(出典): | 労働判例533号45頁、 労働法律旬報1211号62頁、 判例時報1301号71頁 |
その他特記事項: | 原告らが控訴後、平成2年8月29日東京高裁にて和解成立。 |
顛末情報 |
事件番号 |
判決区分 |
判決年月日 |
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