反省しない腐女子とBL作家たち:ボーイズラブとホモフォビア

腐女子たちとホモフォビア

一人のゲイから見る、腐女子とボーイズラヴ作品は、読んでください。


ボーイズラブはゲイへの偏見を助長するという批判は今まで何度も言われてきたが、最近ではゲイ作家のゲイ漫画と、ボーイズラブの近接性も言われてはきている。だが、今現在の2010年の状況は、以前よりも腐女子のメディアへの露出度がかなり拡大しているので、見当違いな腐女子がさらに増え出して、腐女子のゲイへの偏見が根強くなっている状況もある。

ゲイ作家のゲイ漫画ではなく、美少年や美青年ばかりが出て実際のゲイ社会とは乖離した描写ばかりをしているボーイズラブばかりを読んでも、それでゲイを理解したことには全くならない。しかし、ボーイズラブを批判すると、「ゲイへの差別をするな」とか「ホモフォビア」などと言ってくる大きく勘違いした腐女子が多い。まるで、アダルトビデオのAV女優の演技を見て、それが全てありのままの女の姿であると本当に思っているかのようである。

ボーイズラブを読んで自己を投影している腐女子たちは、その本を同性愛ではなく異性愛の本として読んでいるので、ボーイズラブは同性愛の本であるという前提自体が違っている。ボーイズラブは同性愛を描いたものであるという前提自体が、正しいとはいえない。

ボーイズラブのゲイへの偏向した描写について、ゲイの当事者が栗本薫に送ったメールがある。

平成12年12月21日 栗本薫様宛のメール

「ボーイズラブは、男からの性衝動の恐れに対する女たちの緩衝材として働いている」という考え方がある。この考えは、藤本由香里『私の居場所はどこにあるの? 少女マンガが映す心のかたち』(朝日文庫)や、横森理香『恋愛は少女マンガで教わった』(集英社文庫)などの記述にも通じるものだ。

女たちがボーイズラブを読まなければならないのは、男たちが女たちに性の恐れを抱かせているからだという。しかし、男から女への性衝動に恐れがあるのは、日本に限らない。緩衝材の考えに立つと、日本にこれだけボーイズラブが普及しているのだから、日本は世界的に見ても、特に男から女に性衝動の恐れを抱かせる国であるという理由がなくてはならない。

男から女への性衝動の恐れとして処女から非処女になること、処女性の重視で考えても、日本では特に処女性を重視してこなかった。「日本にこれだけボーイズラブがあるのは、日本の男たちが女性に性の恐れを抱かせているから」というのは、日本の歴史や日本以外の国の状況を理解していない。

ルイス・フロイス『ヨーロッパ文化と日本文化』岡田章雄訳注、岩波文庫

第二章 女性のその風貌、風習について

1 ヨーロッパでは未婚の女性の最高の栄誉と貴さは、貞操であり、またその純潔が犯されない貞潔さである。日本の女性は処女の純潔を少しも重んじない。それを欠いても、名誉も失わなければ、結婚もできる。

ボーイズラブを読むことでゲイに対する理解をもっと深めようとして、ゲイの当事者が書いた文献を読んだりする腐女子もいるだろう。ボーイズラブは、ゲイの理解へのきっかけにはなる。しかし、そもそものボーイズラブの作家たち自身が、ゲイへの偏見に基づいて書いている者も少なくない。「ボーイズラブはファンタジーだから関係がない」ということはできない。偏見に基づいたボーイズラブによって、「私はゲイの味方」と大きく勘違いした腐女子たちの言説が拡散しているのだから。

多数派の女たちは多数派の男たちを糾弾して女性差別を言う時には威勢がいいが、多数派の女たちが少数派の男へ差別していることの反省があまりに足りなすぎる。ボーイズラブの問題も多数派から少数派への差別問題で、多数派の女たちが反省しないから問題になる。腐女子たちが、妄想に満ち満ちたボーイズラブを読むことが問題だと言っているわけではない。腐女子たちはゲイに対する強烈な偏見を根強く持ちながら、「私はゲイの味方」と思い込み、自らを「正義」の側に置き、「同性愛差別に反対!」などと言うことをいい加減に反省しろと言っているだけだ。

差別は複合的で、男が女を差別していると一律のものではなく、多数派の女たちが少数派の男を差別している深刻な問題がある。同姓の結婚も認められていない状況では、ゲイたちは多数派の女たちよりも遥かに違法な者として存在している。日本のゲイは日本社会はゲイに寛容であるからとして、あまり抗議をしたりしない。『「オカマ」は差別か 『週刊金曜日』の「差別表現」事件―反差別論の再構築へ〈VOL.1〉』(ポット出版)を見ても、むしろ、「差別利権」というものに敏感なゲイも多い。そういう状況に腐女子たちは甘えてしまって、反省することが少なかった。

腐女子たちの多くは本当にゲイのことを理解しようとしてゲイの当事者が書いた文献の一冊ですら読もうとしないのだから、自らの性の捌け口としてボーイズラブを読んでいるとはっきりと言えばいい。男たちが、性の捌け口としてアダルトビデオを見ているのと同じようなものであると。

2010年5月掲載



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