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横浜市:開港と共に発展した「カメラの街」ピンチ 写真館などの閉店相次ぐ /神奈川

 ◇デジカメ普及や量販店増背景に ピーク時の4分の1

 1859年の開港以来、日本で初めての写真館が開業した「カメラの街」として知られる横浜市で、写真館やカメラ店の閉店が相次いでいる。デジタルカメラの普及や量販店の増加で、ピーク時の4分の1以下まで減少したとみられ、廃業する関係者からは往時を懐かしむ声が出ている。【山田麻未】

 同市中区太田町のカメラ店「ろまんカメラ」は4月に閉店した。46年に中区野毛で創業。最後の社長となった金丸二郎さん(71)は56年入社で、主に行政や港湾関係の企業などの営業に奔走した。

 戦後間もない店には、進駐軍が女性を連れて写真を撮りに来た。ラジオ関東(現ラジオ日本)に来た島倉千代子さんを撮ったり、外国船に乗ってきた密航者の証拠写真を撮るため船に上がったこともある。61年にできた横浜マリンタワー(中区山下町)に店を出したときは、風景写真を撮るため全長106メートルのタワーの頂点に命綱なしで登った。

 70年、港湾や県庁が近い太田町に移転して売り上げを伸ばしたが、「デジタルカメラの普及で5年くらい前からじわじわ売り上げが落ちた」。フィルムを1本現像し、新たなフィルムを買ってくれるかつての客単価は約2000円なのに対し、デジタルカメラを使う客の客単価は数百円で、営業を続けることは難しくなった。

 県カメラ商協同組合の副理事長を務めた写真館「渡辺フオトアート」(同市保土ケ谷区)の渡辺武店長によると、組合に加盟するカメラ店や写真館の数は戦後から増加し、82年に市内で171軒に上り、その後、ピークを迎えたとみられるバブル期にはさらに増加したが、デジカメの普及が主な理由となって90年代後半から減少。組合が解散した08年には41軒になっていた。

 とりわけ写真館は、かつてお宮参りから七五三、成人式など町の人々の成長を見てきたものの、少子高齢化やデジタルカメラの普及、写真スタジオのチェーン店の増加の影響で減少が激しい。

 渡辺さんは04年からはデジタルカメラも使っているが、入学式など一生に一度の場面での撮影を頼まれると、今でもフィルムカメラを使う。「デジカメの映像もポジフィルムの色の美しさにはかなわない。使う人が少なくなっても、なくなることはない」

毎日新聞 2010年5月11日 地方版

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