訴訟合戦泥沼化？脱税疑惑を指摘された眞鍋かをりさんは…

　脱税事件を起こした所属事務所を相手取り、「事務所のせいで、自宅まで家宅捜索された」などと指摘した上で、契約が存在しないことの確認を求める訴訟を東京地裁に起こしたタレントの眞鍋かをりさん（２９）。しかし、その所属事務所もマスコミ向けに「家宅捜索は眞鍋本人の脱税容疑によるもの」などと反論し、トラブルは泥沼化の様相を呈している。さらに所属事務所は、仕事のキャンセル料として数億円の損害賠償請求訴訟の提訴もちらつかせており、問題は長期化しそうな気配だ。（大泉晋之助）

■年俸制の月割り月給は４２０万円

　３月下旬、一部スポーツ紙と週刊誌が衝撃的な記事を掲載した。それは、脱税事件を起こした所属事務所を相手取り、「事件で名誉を傷付けられた」などとして契約が存在しないことを訴えている眞鍋さん自身の脱税疑惑を報じるものだった。

　掲載された疑惑はこういうものだ。

　眞鍋さんの報酬の半分近くが平成１９〜２１年の約３年に渡り、眞鍋さんの母が社長を務める「マナベ電子工業」に業務委託料の名目で支払われ、眞鍋さん自身が所得税の支払いを免れていた−というのだ。

　これらの報道では、眞鍋さんのギャラの実体までもが明らかにされた。眞鍋さんのギャラは年俸制で、事務所は月割りで支給していたのだという。報道では、２１年の月給は４２０万円で、うち１８０万円が母の会社に支払われたとしている。そして、訴訟では事務所の事件で家宅捜索を受けたとしている眞鍋さんの主張は誤りで、自宅の家宅捜索は眞鍋さん自身の脱税疑惑に関連したものだと事務所側が主張しているというのだ。

　事務所に対し反旗を翻した眞鍋さんが今度は批判を受けることになった上に、自身のギャラという最もプライベートな部分まで明らかになってしまったのだ。

■事務所側の仕事はキャンセル

　眞鍋さんがトラブルとなっているのは、以前所属していた芸能プロダクション「アバンギャルド」（現・市エステートコーポレーション）と現在の所属事務所の「アヴィラ」。アバンギャルドは昨年８月、社長が脱税容疑で逮捕され、今年３月に執行猶予付きの有罪判決を受けている。

　脱税事件と前後して、アバンギャルド所属のタレントは眞鍋さんを含めてアヴィラに移籍した。ただ関係者によれば、「社長は違うものの、アヴィラの実質的経営者はアバンギャルドの社長で、経営実態は変わらない」との見方が大勢を占めている。

　昨年来、眞鍋さんと所属事務所とのトラブルが伝えられ、その最中に、眞鍋さんが「事件の関係先として家宅捜索され、名誉を傷付けられた」として、新旧所属事務所との契約不存在の確認を求める訴訟を起こしていたことが２月に発覚。眞鍋さんは事務所側の仕事をキャンセルし続けているとされる。

　事務所側は「契約が満了していない」などとして、訴訟では全面的に争うものの、眞鍋さんに対するコメントについては沈黙を保っていた。そんな中で浮上したのが眞鍋さんの脱税疑惑だった。

■“飼い犬に噛まれた”事務所側が反撃

　事務所側はいつまでも黙ったままではなかった。眞鍋さんの脱税疑惑が報じられて間もない３月２９日、アヴィラはファクスで「眞鍋本人に関する脱税容疑事件」と題する資料を、マスコミ各社に送った。

　その資料には「眞鍋かをりの将来を考えて、対外的な発言や釈明を避けておりましたが、これ以上黙視できなくなりました」などと記されている。“飼い犬に噛まれた”格好となっていた事務所側の反撃だ。

　事務所側は資料の中で、眞鍋さん本人の脱税疑惑について、スポーツ紙や週刊誌が先に報じたものと同様の説明をしている。

　その上で、事務所が眞鍋さんの報酬の半分近くを支払っていた眞鍋さんの母の会社について「芸能活動とは無関係な会社」と指摘。会社への支払いは眞鍋さん側の要請で行われ、眞鍋さん本人も了承していたという。所属事務所までもが眞鍋さんの脱税疑惑を追認した形だ。

■事務所側の賠償請求額は３億円？

　また、この資料で事務所側は、「今年１月から当社の存在を無視し、独自にテレビに出演するようになった」などと主張。眞鍋さん側を批判している。

　眞鍋さんは、今年に入って芸能活動を再開した際、所属事務所とは別のマネジメントを後ろ盾にして、仕事を得ているとされている。しかし、これに対して、「２３年３月まで契約が残っている」と考える事務所側は納得していない。

　このため、事務所側は眞鍋さんが事務所の用意した仕事をキャンセルしていることで多額の損害が出ているとして、眞鍋さんを相手取り３億円とも言われる損害賠償請求訴訟を起こすことを検討しているとされる。

■「裁判の中でばっちりやります」

　事務所側の攻勢に対し、眞鍋さんはどのような反応をしているのか。眞鍋さん側は弁護士を通じて、「税務申告内容について、国税当局から事情聴取や指摘を受けた事実はない」などと疑惑浮上後に反論した。

　また、母の会社との業務委託契約についても、契約内容に一部誤解を招く部分があったとしてすでに修正申告をしているという。

　眞鍋さん本人も芸能活動は続けており、一連の問題について質問してくる芸能マスコミに対しても、「裁判の中でばっちりやります」と答えるなどしている。

　眞鍋さんが東京地裁に事務所を訴えたのは昨年１２月。その後、４月までに２回の口頭弁論があった。今後、徐々に争点の絞り込みやそれに伴う証拠の提出、関係者の尋問が行われるとみられる。

　現在までのところ、眞鍋さん側と事務所側の主張は真っ向から対立しており、争点の整理には時間がかかることも予想される。その上、事務所側が新たに訴訟を起こせば、さらに時間がかかることは必至だ。

　また、東京地裁の結論が出たとしても、双方の言い分が食い違う以上、いずれかが控訴・上告をして訴訟が続くことも予想される。このため、問題の終結までには数年かかる可能性も出てきた。

　所属事務所とたもとを分かち、独自に活動を続ける眞鍋さん。インターネットの公式ブログは今年１月を最後に更新されておらず、「ブログの女王」と呼ばれたのも過去のことになりつつある。が、テレビなどでのタレント活動自体は以前のペースに近付いているようだ。

　そして、トラブルにも疲れた様子をみせず、横浜国立大出身の“知性派”の顔をのぞかせながら、明るく振る舞っている。ただ、その活動の足下は非常に不安定なものともいえ、その心境はいかばかりだろうか…。