ギリシャとユーロの問題を企業にたとえればどうなるか? M&Aによって拡大してきたコングロマリット企業(ユーロ)が、全体としての景気低迷環境の下で、ある子会社(ギリシャ)が業績不振に陥り、しかも粉飾決算していたことが判明。でも会社法(条約)では子会社への損失補てんが禁止されていて、しかも子会社を清算(破綻)とか売却(除名)とか言う形でのリストラもできない。もはや子会社単独での上場もしていない(親子上場は禁止されているみたいですね(笑))ので子会社そのものの増資は難航する。まあそんな状況でしょうか? この状況でこのコングロマリットの総帥にとってのチョイスはそれほどありません。基本的に余裕のある子会社から問題のある子会社にキャッシュフローの支援をしながら、全体の収益力によって損を償却していくしかないのでしょう。定款を変更してコングロマリット全体での調達資金から融通したり、するってこともありでしょう。もともとこのコングロマリットのビジネスモデルの最大のものはM&Aによるシナジー効果だったはずですが、どうやらそれはある程度使い果たしてしまい、今となっては子会社相互間の軋轢ばかりが目に付くようになりました。最初は、「多少は無理があるかもしれないけれど、みんなで盛り上がろうぜ!」みたいな体育会系のノリで、経営者同士の意思統合とか、人事制度の統一とかそういうものをやらないまま、子会社同士が勝手に取引を始めたりして、勝ち組負け組みがはっきりしてしまいました。それと平行して、コングロマリットグループ企業としてあるべき財務数値の基準を決めたのに、守れないし守ろうともしない子会社がほとんど。親会社の言うことなど聞く必要がないと思っている。全体がいい調子なら何とかごまかせたものの、いまや景気低迷環境下でどのセグメントも調子は今ひとつだし、よく見たらほかにも不良債権とかいっぱいありそうな子会社があって、そもそもこのコングロマリット全体の収益力や信用力に市場から疑念が生まれているような状況です。 通常の企業であれば、リストラでいろいろな不具合を切り捨てて再生することを期待するのですが、今回世の中の人々は、このコングロマリットがリストラできないことをとっくに見切ってしまっています。通常こういう場合ってやはり株価は落ちますわね。 二つだけ、普通の企業と違うところはきちんと押さえておかなければなりません。一つ。この市場での株価(通貨価値)は絶対評価ではなく相対評価です。ほかの会社やコングロマリットのパフォーマンスがもっと悪ければ株価上昇すらありえます。二つ目。このコングロマリット自体には倒産はほとんど考えられません。自分たちで株(通貨)をバンバン出してファイナンスできるからです。子会社そのものについては倒産はありえるものの、いまのところ連鎖反応が怖いのでどの子会社も倒産させないだろうと見られています。連鎖反応が起きると、何十年もかけて苦労して作り上げた一大コングロマリットが崩壊してしまいますから。このため、各子会社そのもののリスクをとりにいく取引もあるようで、いまのところ市場は親会社が完全保証という見通しを立ててきていますので、魅力的になっています。投機や裁定の機会もたくさん転がっていそうです。とはいえ、いずれにしてもこれからグループ全体の調達の問題は生じますし、ある程度「希薄化」が相対的に進行すると予想されます。 コングロマリット企業の株(通貨としてのユーロ)は頻繁に市場取引されています。みなさんだったらこの企業の株は買いでしょうか売りでしょうか? 話は変わりますが、厳しい歳出カットや公務員給与の引き下げ案をうけてストライキなどがこれからもギリシャなどでは起こるかもしれません。ユーロ加盟が予想以上に柔軟性を失わせ外的要因の影響を受けやすくなる結果経済にボラティリティーをもたらす、このことを国民が十分に理解せず加盟してしまったことの帰結ですが、この時期公務員たちがストなどで抗議することについてはほかの国々からはやや「空気読め」的な反応を受ける可能性があります。実際アイルランドなどは大幅な増税や給与カットを受け入れているわけで、それ以上にいい加減な国が何のペナルティーもなく救済されるということはありえないと考えられるからです。つまりそういうことを要求しているに等しいストや抗議行動は身勝手以外のなにものでもない、ととらえられる可能性があります。もっと言えば、いったい誰に対して抗議しているのか?自国政府なのか、ユーロ圏全体なのか。つまりほかの国の犠牲の下に自分たちに金をよこせと要求しているのか?ということです。その辺ストとかやるとき気をつけないと、ほかの国の人々を敵に回してますますややこしいことになりかねないと思います。 システム的安定という観点からはギリシャの人々が(70%は受け入れているようですが)おとなしく厳しい制約に服してもらう必要があるわけですが、そこはそれ、にんげんだもの’byみつお、ですから、理解も納得もできない人が国民を扇動してしまって混迷を深めるというリスクは残っています。これでギリシャに甘い顔でもしたら今度はアイルランドの人が黙っていないでしょうしね。この問題に限らず、最近のすべてのテーマに共通するのは「政治、規制、行動」にかかわるリスクです。合理的経済人というのは、もともと怪しい概念であったとはいえ、これまでは多少は前提にしてもよかったのですが、今ではもはやどこにもいないというベースで考えないといけない時代なのかもしれません。結果としてワタクシの結論はボラティリティーの上昇。人のことはわからんし、ましてやそいつが何をするかまったくわからん、ってことがみんなわかり始めるってことではないかと思います。 ご参考までにユーロ円のインプライドボラティリティーのチャートですが・・・ |
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まあ、、、ギリシャの財政赤字は慢性的で、この慢性疾患をどうするか、という問題でしょうか、、。例えればギリシャ経済は経済構造的に世界・ユーロ経済指数ハイベータ銘柄。ドイツにしてもなんの縛りもなく資金援助をするわけにもいかないけど、目先制約を課してもなあなあになって結局元の木阿弥にならないようにするには頭が痛い問題だと思います。この辺お国柄の問題で地中海系各国はおおらかというか、なんというか、、。 |
ttori 2010/02/13 11:06 |
今回の記事も目からウロコです。 |
40歳無職 2010/02/13 21:47 |
ttoriさんどうもです。もともと無理のある仕組みという意味ではまさに慢性疾患。逆に言うと麻酔も効かない状況で無理やり手術するのかどうか結構悩む状況だろうと思います。で結局手術しないで自然治癒か死亡かというチョイスでしょうか? |
厭債害債 2010/02/19 01:11 |
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