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特集ワイド:「名医」が受けている検診・健康診断

 日々を快適に生きるために欠かせない人体のオーバーホール。それが定期健康診断であり、個別の検診などだろう。では、何をどう受ければいいのか。ヒントを得るために、多くの患者に「希望」を与えてきた著名な医師たちに「自らが受けている検査」を語ってもらった。【平野幸治】

 ◇「痛くない」方法で無理せず--諏訪中央病院名誉院長・鎌田實さん(61)

 痛くない。副作用がない。大ざっぱにわかればいい。「がんばらない健康法」を追求する僕が受けている検査の基本は、これだけです。

 春は血液、尿、胸の写真、それに心電図など。秋には採血を中心に簡単に済ませています。なるべく超音波検査(エコー)も受け、広く内臓を診てもらっています。希望すれば胃の内視鏡検査も受けられるのですが、痛いのは嫌だから「忙しい」とパスすることも。だから数年に1回。

 健康診断って、楽しい生活を送るためにあるものだと思うんです。結果を読み「ああよかった、またうまいもんが食えるぞ」なんてね。

 ならば「要注意」のデータが出たときはどうするか。生活を変えてみる。食べ過ぎたと思えば、少し粗食にする。運動不足だったら体を動かしてみる。いちばん大事なのは、健康診断の結果をこのような「行動変容」につなげることです。

 だからといって「優等生」になるつもりはありません。実際、現在の特定健診(メタボ健診)では男性の腹囲は85センチを境界線としていますが、僕は90センチ。しかも、追跡調査のデータを分析すると「ちょい太」がもっとも長生きとさえいわれているのです。

 僕の場合は、スキーやテニスで汗を流したり、毎朝4時半に起きて軽い体操をしたりしています。「最近、食べ過ぎかな」と思ったら、ご飯、小麦粉食品、砂糖を口にしない「糖質断ち」をします。食物繊維の豊富な寒天と抗酸化力のあるトマトを組み合わせた「トマト寒天」も、食事に取り入れて。すぐにウエストが締まってきますよ。

 ただし、がんばらない。無理もしない。ちょっとした工夫を、できる範囲で実践すればいいんです。おいしいものを食べることは決していけないことではない。だって、人は幸せを感じるために生きているのですから。(談)

 ◇腹部や頸動脈にはエコー--性差医療情報ネットワーク理事長・天野恵子さん(67)

 私が検診を受ける際に有力なツールとし、患者さんにもお勧めしているのがエコーです。痛みもなければCT(コンピューター断層撮影)のように放射線を浴びることもないので、妊娠可能な女性にも安心です。

 定期的に受けているのは腹部、頸(けい)動脈、乳腺、甲状腺のエコーです。「腹部」は1回の検査で肝臓や腎臓、膵臓(すいぞう)、脾臓(ひぞう)、子宮や卵巣まで調べられます。おなかの臓器は「沈黙の臓器」でもあり、発見が1年でも遅れると困るのが、がんの怖さ。膵臓がんの早期発見は難しいなど限界はあるものの、ぜひ受けてほしい検査です。

 頸動脈エコーは、脳に血液を送る首の血管の詰まり具合を調べるもので、脳梗塞(こうそく)の予防や治療に有効です。私自身、医師として、この方法で幾人の患者さんの異常を見つけたことか。男性には特にお勧めしたいですね。

 乳がん検診についてはマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)もありますが、まだ若く乳腺密度の高い女性では見落としの恐れがあるうえ、あまりの痛さに足が遠のいてしまう人も多い。だからこそ、まずは乳腺エコーです。自治体の乳がん検診が隔年実施なら、谷間の年は自費で受けてもいいでしょう。「命」にかかわることですから。

 胃の検診は内視鏡を2年続けたら、次の年はエックス線検査というサイクルを組んでいます。悪性のスキルスタイプのがんは内視鏡では発見できず、エックス線検査の方が有効だからです。大腸がんを見つけるための便潜血反応検査も毎年やっています。

 女性にとっては、医師や検査技師に男性が多いことが心理的な「壁」になっていますが、産婦人科では女性ドクターの比率は高まっています。産婦人科医でありながら内科にも精通している、そんな頼れるかかりつけ医が増えることが望まれます。(談)

 ◇胃内視鏡に除菌、脳MRIも--順天堂大医学部心臓血管外科教授・天野篤さん(54)

 医師の立場上、大病を発症してから「検査をしていれば……」と後悔するのはまずいので、職場の定期健康診断のほかに、いくつかの検診を受けています。実は、40代後半にダイエットに成功してからは快調だったので検診はさぼり気味でしたが、2年前に甲状腺の病気を患ったのをきっかけに「そろそろ、きちんと診ておくべきかな」と。

 昨年から今年にかけて受けたものを挙げれば、まず胃の内視鏡検査。同時にピロリ菌の除菌もしました。初めて受けたのが脳のMRI(磁気共鳴画像化装置)検査です。というのも、僕らの年代から、自覚症状はないが重症化の恐れがある「隠れ脳梗塞」が増え始めるからです。

 かつて尿管結石を患ったこともあり、造影剤を使わない単純CTはほぼ毎年受け、結石や肺がん、心筋梗塞につながる冠動脈の石灰化などを観察しています。採血検査でPSA値(前立腺がんの指標)も調べていますよ。

 心臓については、定期健診で安静時心電図をとっています。これは血の塊を発生させて脳梗塞のリスクを高める「心房細動」を見つけ出せるので、特に60代以上の高齢の方には有効な検査です。

 心臓外科医としてアドバイスするなら、胸の痛みなどの自覚症状があれば、一日も早く循環器の専門医に診てもらうべきです。「胃の張り」も心臓病の症状である可能性があり、要注意です。

 しかし、そういった自覚症状がない人は「検診ありき」ではなく、まずは運動をしてセルフチェックをしてみましょう。例えば歩道橋を全力で駆け上がり、速足で渡って下りる。その結果、胸の圧迫感や異常な動悸(どうき)・息切れがなければ、まずセーフです。

 大切なのは、検診に頼り過ぎず、運動や生活改善で自らの不健康な部分を健康に変えていくことです。(談)

 ◇料金は?

 検診は基本的に保険がきかない。料金は施設ごとに違うが、胃内視鏡1万2000~1万8000円▽腹部エコー5000~1万数千円▽乳腺エコー、頸動脈エコー5000円前後。胃・大腸・肺・乳・子宮頸がん検診は自治体で0~2500円程度で受けられる。脳MRIは2万~3万円程度で、脳ドックにも組み込まれている。

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t.yukan@mainichi.co.jp

ファクス03・3212・0279

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 ■人物略歴

 ◇かまた・みのる

 東京医科歯科大学卒。長野県茅野市の諏訪中央病院で地域と一体になった医療を実践。「がんばらない」など著書多数。

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 ■人物略歴

 ◇あまの・けいこ

 埼玉県新座市の静風荘病院特別顧問。東京大学医学部卒。性差を考慮した医療を提唱し、女性専用外来の拡大にも尽力する。

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 ■人物略歴

 ◇あまの・あつし

 日本大学医学部卒。年間手術数は300例以上と国内屈指。著書に「あなたの医学書 心臓病」(誠文堂新光社)など。

毎日新聞 2010年5月11日 東京夕刊

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