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クローズアップ2010:首相「県外移設」断念(その2止) 稚拙だった政治主導

 「海兵隊の(抑止力としての)重要性を考えると、すべてを県外あるいは国外に踏み出すという結論には、私の心の中ではならなかった」。鳩山由紀夫首相は4日の沖縄訪問で、米軍普天間飛行場の県外全面移設断念を表明した。

 首相はこの日、「最低でも県外」と昨年衆院選で事実上公約したことを「抑止力に対する認識が浅かった」と釈明。「抑止力」を理由に県内移設の受け入れを求める姿勢を鮮明にした。併せて表明した鹿児島・徳之島への普天間基地機能の一部移転は、防衛省内で「現行案修正なら不要」と結論付けられており、「県外」にこだわる首相の体面を保つ意味合いが大きい。現行案見直しが沖縄の基地負担の県外への拡散につながった今回の事態は、鳩山政権の「政治主導の試み」の稚拙さを浮き彫りにした。

 鳩山首相は普天間問題を「官僚政治の打破」の文脈から「政権交代の象徴」ととらえてきた。首相就任後も「従来の日米関係は米国の言いなりだった」と重ねて強調。自民党政権下で外務、防衛両省が敷いたレールに乗るまいとして「外務省は使わない」との姿勢を示し、昨年末、普天間問題の仕切りを平野博文官房長官に任せた。

 平野氏は独自に米海兵隊関係者と接触し「県内移設しかない」と早期に判断。就任直後から「県外は厳しい」と公言していた北沢俊美防衛相と連携を密にする中で県内移設に傾斜し、米軍キャンプ・シュワブ陸上案、米軍ホワイトビーチ沖合案を浮上させた。鳩山首相の真意はあくまで「極力県外」だったが、徳之島に対して本格的な折衝に乗り出すことがないまま時間を浪費。4月に入り、首相自ら徳之島に影響力を持つ徳田虎雄元衆院議員に協力要請、続いて沖縄入りするというどたばたを演じる羽目に陥った。

 「この時期になっても外務省、防衛省、官邸が一つになって動けていない」(首相周辺)。政権内に「チーム鳩山」を作れなかったことが、普天間問題の行き詰まりを決定づけた。【上野央絵】

毎日新聞 2010年5月5日 東京朝刊

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