2010年5月11日0時1分
ギリシャの財政危機が、世界的な金融危機再燃の引き金を引きつつある。先週の世界金融市場は、ギリシャの財政赤字に対してEUなどが支援策を打ち出したにもかかわらず、逆に危機が欧州の他の国にまで広がり、債務返済も危ぶまれるとの不安が広がった。
このため、米国やアジアも巻き込んだ世界的な株価下落を呼び、一部にはドル資金の調達に窮するところがでて、緊急の資金供給が必要になった。欧州の一部の国での財政危機が、再び世界的な金融危機、信用不安、流動性危機に発展しつつある。一昨年秋のリーマン・ショック当時と似た動きだ。
これらの動きは、一昨年の世界的な金融危機が、まだ根本的には解決していなかったことを示唆する。つまり財政金融両面からいわばモルヒネによって痛み止めがなされ、痛みが癒えると、あたかも元気になったかのように株価の反発や生産投資の回復が生じた。
更に一部大手証券会社のアドバイスにより、その副作用が化粧されて見えにくくなっていた。
しかしこれがはがれ、実態の悪さが露呈した。実際、欧米銀行の不良債権はほとんど処理されておらず、金融機能はいまだ回復していない。しかもユーロという単一通貨ゆえに為替調節が難しく、財政支援でもEUの制度的な限界を露呈した。
痛み止めも大量投与すれば、巨額の財政赤字という副作用が大きく、今度はその副作用対策が必要になる。当面は流動性不足などによるショックを回避しつつ、痛みをある程度受け入れつつ、個々のバランスシートを修復していかざるを得ない。日本にも再びこの余波が及ぶ。今度こそ真の危機対応が必要であり、真価が問われる。(千)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。