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普天間移設問題 大メディアがまったく伝えない米国のホンネ

2010/5/11 10:00
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「3町長は拒否」「5月決着は絶望的」――。7日の鳩山首相と徳之島の3町長との会談結果に、大新聞やテレビは相変わらず否定的に騒いでいる。「5月末決着」を強調し、鳩山首相の責任を追及しようと躍起だ。昨年の鳩山内閣発足以降、大メディアは「日米同盟の危機」をしきりに煽ってきたが、日米同盟がおかしくなれば、極東戦略が崩れてしまう。アメリカだって困る。大メディアはオバマ米国の“ホンネ”を正確に報じていない。

 3町長との会談で鳩山は、4月のワシントンでのオバマ米大統領との非公式会談の内容を明らかにした。それは、「日米同盟に資するためにも、沖縄の過重な負担を全国で分かち合うことが大事。大統領としても協力願いたい」と要請したというものだった。
 大メディアは、二言目には、「米国は現行案を望んでいる」と言い張ってきたが、最近の米国高官らの発言を丁寧に見ていくとそんなに強硬ではない。
 5月末の決着について、国務省のクローリー次官補は4日、「複雑で難しい問題。良い結論にたどり着けるまで作業を続ける」と言っている。期限など区切っていない。国防総省のモレル報道官は6日、「基地を抱える地域への影響を最小限にするよう、日本と緊密に連携している」と言った。4日に開かれた日米の実務者協議でも米側は、航空部隊の訓練を徳之島や全国の自衛隊基地へ移転することを柔軟に検討する姿勢を示した。つまり、「沖縄の負担軽減」を強調する鳩山や日本の国民感情に、配慮を見せてきているのだ。軍事評論家の前田哲男氏はこう見る。
「今、一番悩んでいるのは日本ではなく、むしろ米国でしょう。4月25日の沖縄の県民大会に9万人もが集まったことは、米国を相当驚かせた。米国は、『反植民地』『草の根民主主義』の伝統のある国です。“民意”に重きを置きます。沖縄の民意が痛いほど伝わり、普天間を日本国内のどこに持っていこうとしても困難であることがよくわかっているのです。うがった見方をすれば、鳩山首相はモタモタしているように見せかけて、実はワシントンに『日本には引き受けるところがない』というメッセージを出そうとしているんじゃないでしょうか」
 前田氏の見解を裏付ける話を、米国の外交政策に影響力のある超党派組織「米外交問題評議会」のシーラ・スミス上級研究員が書いている。スミス氏は、「日米共同で県外移設の協議を本格化すべき」とする論文の中で、県民大会に9万人が参加し、地元の民意が明確に示されたことの重要性を強調していた。スミス氏は、大統領選でオバマの対日外交政策顧問団のメンバーを務めた。そんな人物が、沖縄の“民意”を重要視しているのだ。日米同盟に亀裂を生じさせたくないのは、米国だって同じなのである。
 普天間問題は日米同盟を従来の隷属的なものから対等なものに変えていく第一歩。その大状況を見据えずに、「自民党政権時代の約束を反故(ほご)にしたら米国が怒る」といった旧体制思考のもとで、読者や視聴者をミスリードし、問題を矮小化する大メディアの責任は重い。

(日刊ゲンダイ2010年5月8日掲載)
2010/5/11 10:00 更新

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