ギリシャ救済は結局「ギリシャが自力で調達ができなくなった場合に限り」「ユーロ全加盟国一致により」「IMFに三分の一の拠出を要請する」ことを前提に欧州首脳会議がまとまったようです。同時にECBは担保基準の緩和を決定しており、BBB格までは少なくともあと9ヶ月は受け入れてもらえるので、現在A格(しかも政治のインプリケーションをかなり重視するムーディーズの格付け)のギリシャにとって当面の危機は去ったことになります。 ポイントはいくつかありますが、まずこれだけでは誰も実際のハラは痛んでいない、ということに注意する必要があります。すなわちまだギリシャは今のところ「自力で」(本当の意味で自力かどうかはわかりませんが)調達を続けているからです。次にユーロ加盟国全会一致としたことにより、加盟国全てが「拒否権」を握ったことです。こうした拒否権を行使するかどうかは国によって異なると思いますが、「自分が将来助けてもらう側に立つ可能性が少しでもある国」はまず拒否権行使はありえないでしょう。しかしながら助けてもらう可能性が皆無といっていいドイツやフランス(これらの国がそういう事態に陥った場合はユーロそのものが完全に崩壊すると思いますから考えること自体が現実的ではない)が拒否権を留保できたことは、とくにドイツの国内に向けてのぎりぎりの妥協が成立できたという点ではよかったものの、今後の不安材料を残すことになりました。つまり今後も「問題が起きるごとに揉める」ことに何の変化もないからです。 言い換えれば、今回の結論は、話が「まとまった」といいつつも実際はIMFが絡むこと以外にはなにも変わっていないし、まだ実際にお金も出していない。にもかかわらず、そのように市場を説き伏せたのはまさに政治の勝利であります。(こうしたインチキな政治力こそ、日本も見習わなければなりませんね。) もうひとつのポイントはやはりIMFの参加。IMFが3分の1でも入るということは、IMFのコンディショナリティーを無視できないということです。ECBの方々が最後までIMFのコミットに反対したのは、結局これを認めるとユーロ独自の規律の決め方が意味を成さなくなるということではないかと思います。それは突き詰めればユーロの存在意味ということになります。IMFを入れることを決めたことで、ユーロの持つ「中途半端さ」がより浮き彫りになってしまったと感じます。財政のレベルの統一まで進むのか、欧州独自の基金を作るのか、といった議論がこれから出てくるはずだし、それがなければ同じ問題が繰り返されユーロの基盤がますます危ういものとなるような気がします。 いずれにせよ、今回の結論は欧州の政治家の技量と役者振りを見せつけられたという意味でも大変勉強になりました。しかし個人的にはまだ、時間稼ぎの段階を過ぎてはいないと感じています。 |
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現状ではトリシェは既にゴールデンパラシュート状態かもしれませんね。先送りは彼に取って退任まで何事もなく終わるための条件でしょうか。 |
EURO SELLER 2010/03/29 19:46 |
>>まだ実際にお金も出していない |
40歳無職 2010/03/29 22:40 |
IMFをわざとかませたり、資金繰りがきびしくなる4月前に、市場参加者のフェアウエー真ん中に落としてくるあたり、さすが、とも思いますが。 |
ttori 2010/03/31 19:41 |
EUROSELLERさんどうもです。トリシェ氏には先送りだけではない理念は多少感じましたけれど、まあ現実にはなかなか難しいようですね。 |
厭債害債 2010/04/01 00:06 |
ギリシャと日本はあまり差はないのでが、日本の場合は財政赤字が、いろんなルートを通って長期化していることに国民が気がつかいだけんんですよね。年金は30年だし、めでたく郵貯は10年なのですが、限度額2倍になったので、20年くらいは痛みはわからんでしょうね。でも最後はみんなしんんじまって、相続税で入ってくるので、1400チョウ円÷3×2=財政赤字なんて実は考えていたりするものです。早い話が国民がいなくなればいいわけで。ハイ |
かる 2010/04/01 23:40 |
以前でた子供手当ですが東京のある自治体で358人というのが早速でたそうですw |
はる 2010/04/04 12:53 |
かるさん、どうもです。おっしゃる通りで痛みは急性ではなく超慢性ですし、経常黒字国の日本にとってはましてやかなり緩やかなものとなります。とはいえ、まさにそれが救いなのであって、時間のあるうちに何とかせんといかんと思います。 |
厭債害債 2010/04/05 05:26 |
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