「安心してお召し上がり下さい」。宮崎牛専門店は、張り紙で安全性をアピールしている=福岡市
口蹄疫問題で家畜の殺処分が進む宮崎県畜産試験場川南支場。埋却処理の現場では青いシートや白い消毒剤が見える=8日午後4時14分、同県川南町、朝日新聞社ヘリから、恒成利幸撮影
口蹄疫に感染した疑いのある豚が見つかった農場で消毒作業をする宮崎県職員ら=7日、宮崎県川南町、県提供
宮崎県で発生した口蹄疫(こうていえき)の被害は急速に拡大し、10日現在で感染確定・疑いは67農場となり、殺処分の対象となる牛や豚は7万6千頭を超えた。発症はまだ県内に限られているが、影響は畜産業界以外にも広がり、周辺の県でも不安が募る。赤松広隆農林水産相は10日、急きょ宮崎入りした。
「農家は体力も気力もない。夢も希望もない」「牛豚の死体を埋めろと言われるが、埋めるところがない」。この日、赤松農水相と面会した畜産関係者からは悲痛な声が相次いだ。赤松農水相は殺処分の補償について「農家に負担はさせない」と述べた。
都農(つの)町で最初に感染の疑いが出たのは4月20日。農水省と同県はこの農場の牛全頭の殺処分を進めたほか、半径10キロ以内の家畜の移動を禁じたが、その後も発生は広がる一方だ。5月に入ってからは特に豚で増え、殺処分対象は県内全頭数の7%を超えた。
急速な拡大のため殺処分は人手が足りず、作業が追いつかない。また豚農家は広い土地を持たないケースが多く、死体を埋める場所すら未定の農場も多い。
国内で口蹄疫が確認されたのは2000年以来10年ぶり。前回は宮崎県で35頭、北海道で705頭が殺処分対象になり、すべて牛だった。今回はウイルスの感染力の強さと、豚にも広まることが特徴だ。
ただ、発生の大半は川南(かわみなみ)町の一部に集中しており、農水省は「封じ込めはある程度できている」とする。また、山田正彦農水副大臣は「肉の供給や価格は全く心配はいらないと思う」と話す。