僕がいちばんぐっときたのは、iPhoneで連絡帳や、メールの受信ボックスをスクロールする際、いちばん上やいちばん下までスクロールし切っても、その先まで少し動いて、その後、反動で戻るような動きをするところ。
ただ普通にぴたりとスクロールが止まるよりも、「あ、ここまでで終わりなんだな」ということが、本能的にわかる。
こうしたiPhoneの優れたところをそのままに、iPadでは画面を大型化した。これなら高齢者や子どもでも使える。
あまりに気軽で、あまりに使いやすくて、子どもに渡したら手放せなくなってしまうだろうから、僕自身は子どもには見せないつもり(笑)。
今のパソコンのOSのシェアは、Windowsが90%。Macは10%でしかない。でも、もし仮にこのシェアが逆だったら、どうだったろうか。
おそらく、高齢者がパソコンを使えないだとか、教育の現場になかなかITが導入されないだとか、そうしたデジタルデバイドの問題は起こっていなかったと思う。家庭や職場でのパソコンのトラブルも半減していたはずだ。
日本メーカーには絶対に作れない
もちろん、パソコンを普及させたマイクロソフトの貢献はかなり大きい。でも、いろいろな操作が、直感的でわかりやすいとはとてもいえない。
ましてや、今の日本メーカーにはアップルのような製品や「iPod(ハードウェア)+iTunes(サービス)」で実現したビジネスモデルは絶対に作れないだろう。
彼らにはまだ、技術と資本と人が残っている。でも、製品への強いこだわり、哲学、世界観を持っていて、リスクを取るリーダーがいない。
僕はドコモの役員だったけど、やっぱり、大きな決断をするには役員ではダメ。せめて、副社長クラスじゃないと。
今の通信会社や電機メーカーの顔触れを見ていると、ジョブズのような決断を下せる人が何人いるか、疑問だ。
もちろん、過去には日本企業にも傑出したリーダーはいた。なんとかがんばってほしいね。
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