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県民の平均寿命が常に全国トップクラスの福井県。「健康長寿」の要因として、真っ先に挙げられるのが食生活だ。脳血管疾患による死亡率が低いという統計もあり、日頃の食習慣が高血圧や動脈硬化を予防しているようだ。そこで注目したのが「越前おろしそば」と「竹田の油あげ」。本場の食べ方を学ぼうと、坂井市丸岡町へ出掛けた。
昔から「そばは五臓六腑(ろっぷ)のアカを取る」と言い伝えられ、栽培が盛んな福井県。中でも丸岡町は、生産量が県内トップクラス。その本場で食べてみようと訪ねたのは、丸岡城天守閣のすぐ近くにある一筆啓上茶屋だ。
日本庭園を見渡す明るい店内で注文すると、そばは2つの鉢に分けられて出てきた。それぞれ大根おろしと白だし、ネギとかつおがかけられている。普段食べるそばよりはるかに白っぽい。口に運ぼうとすると、ほのかな香り。食べてみるとそば独特の風味が口の中に広がる。これまでに食べたそばとは明らかに違う。
白さの秘密は工程にあった。毎朝、そばを手打ちしている同店の店長・北川智代美さんが説明する。「農家から玄そば(収穫したそばの実で黒い殻をかぶっている)を買って、それを丸抜き(脱皮)するときに、普通より多く網を使います。だから黒いのが入らない」。さらに製粉は機械を使わず、「石臼でひきます」と北川さん。この手作業が、風味を殺さない秘訣(ひけつ)のようだ。食べ終わると北川さんが「そばより、そば湯がものすごく体にいいんですよ」と教えてくれた。
そばとともに福井の食習慣の特徴は、油あげの消費量が全国平均の2倍もあることだ。丸岡町の山間部に位置する竹田では昔、「寒の入りに油あげをこっそり1枚食べると、脳卒中にならない」という言い伝えがあった。その竹田の油あげを1925年から作り続けているのが、国道364号線沿いにレストランを構える谷口屋だ。
白木を使った内装の店内で注文したのは「竹田の油あげ定食」。テーブルに届いた油あげを見て、腰を抜かしそうになった。大きい! お茶わんの3倍はある。正確には15センチ四方、厚さ3・5センチ。
3代目の社長、谷口誠さんが話す。「豆腐1丁分を、低温から高温まで50分かけて揚げます。しっかりした硬めの皮で、中には気泡が入ってますよ」。ハシで切っておろしと薬味をのせ、自家製の特製ダレをかけて食べると、ジューシーだ。揚げたてだけに、菜種油の風味が心地いい。
「肉が手に入らなかった昔は、貴重なたんぱく源として食べられてきたんです。脳卒中の予防になるのも、いまは科学的に裏付けが取れてますからね」と谷口さん。普通、定食は油あげ半分だが、この日は特別に1枚入れてもらった。食べきれるか不安だったが、最後まですっきりとのどを通った。
◆福井県の平均寿命 厚生労働省が5年ごとに調査している「都道府県別生命表」によると、男性の平均寿命は90年が76.84歳で全国2位。その後95年(77.51)、00年(78.55)と2位を続け、05年に79.47歳で4位。女性は00年に85.39歳で2位。05年は86.25歳で11位だったが、男女平均では4位。男性の長寿が特徴といえる。男女平均は、90、95年が4位。00年も2位。ベスト5の常連県だ。
◆一筆啓上茶屋 営業は午前9時~午後6時。おろしそば550円、ソースかつ丼を組み合わせた「福井人セット」780円。不定休。坂井市丸岡町霞町3の1の3(TEL0776・66・5880)。
◆谷口屋 坂井市丸岡町上竹田37の26の1(TEL0776・67・2202)。レストランの営業は午前11時(土、日曜、祝日10時)~午後3時。竹田の油あげ1枚530円、油あげ定食900円など。火曜定休。油あげなどを販売する店内の直売店は午前9時~午後5時。不定休。北陸自動車道「丸岡IC」から約20分。
(2010年5月5日06時00分 スポーツ報知)