理工系の優秀な人材奪う医学専門大学院(下)

■医学専門大学院が理工系の人材を奪う!?

 5年前に医学専門大学院の制度が導入されて以降、各大学の理工系学部は学生の流出に頭を抱えている。理工系の大学生たちが、大挙して「医師の登竜門」を目指そうとする中で、結果的に医学専門大学院が基礎科学の優秀な人材を奪っているというわけだ。昨年、ソウル市内の名門C大学(私立)の生物学科を卒業した32人のうち、14人が医学専門大学院や歯科医学専門大学院へ進学した。

 2005年-08年までに、全国の4年制大学の生物学科の卒業生800人が医学専門大学院へ進学した。これは、医学専門大学院の入学者全体の35%に相当する。このため、基礎科学分野の関係者は、生物学を専攻した優秀な人材がいなくなってしまう、と悲鳴を上げている。

 浦項工科大(ポステック)からも昨年96人の卒業生が、また韓国科学技術院(KAIST)からも63人が、医学専門大学院や歯科医学専門大学院へ進学した。医学専門大学院の入学者の中には、理工系分野の発展を名目に、政府や大学が支給した奨学金を受け取った学生も多く含まれていた。与党ハンナラ党のパク・ヨンア議員の事務所が提供した資料によると、カトリック大の医学専門大学院の場合、今年は47人の入学者のうち、奨学金を受け取っていた理工系学部の学生が27人に達したという。

■理工系の大学院志願者が急減

 理工系学部の成績優秀な卒業生が医学専門大学院に流れる現象は、理工系の大学院の没落にもつながっている。理工系の名門大学として知られる、ソウル市内のD大学では今年、大学院の生物学科を志願した同学部の卒業生が一人もいなかった。また、昨年も3-4人にとどまった。

 こうした現象は、ほかの理工系の名門大学でも見られる。ソウル大、KAIST、浦項工科大の生命科学分野の卒業生が、同分野の大学院に進学した比率は、2004年から08年までは33-34%程度だったが、医学専門大学院の募集定員が増えたため、今年は16%にまで激減した。

 延世大生命システム学部の権寧根(クォン・ヨングン)教授は、「理工系大学が医師予備軍の養成所へと変貌してしまったような感じだ。基礎科学や基礎技術分野の優秀な人材が流出することで、これらの分野の空洞化が懸念される」と語った。理工系の大学教授たちの間では、学部生たちをどれだけ医学専門大学院に送り出せるかが、「良い大学」の指標になってしまっていると嘆く声も上がっているという。

 さらに来年からは、大学2年生を修了した学生を対象とする、薬学専門大学院(定員約1200人)の募集も始まる。ソウル大の姜大煕(カン・デヒ)研究部長は、「2年生を修了した大学生までが流出すれば、理工系の優秀な人材が本当にいなくなってしまう。均衡ある科学の発展のためにも、医・歯・薬学分野の人材育成体系を大々的に見直す必要がある」と主張している。

金哲中(キム・チョルジュン)記者(医学専門)

兪碩在(ユ・ソクジェ)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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