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きょうの社説 2010年5月11日
◎北陸3空港 重要度増す運用の一体化
関西圏で議論が活発化している関西、大阪(伊丹)、神戸3空港の一元管理の問題は、
北陸にとっても見過ごせない動きである。2014年度の北陸新幹線金沢開業で羽田便の需要減が見込まれることや、全国各地で広域ブロック単位の誘客活動が進展している状況を考えれば、小松、能登、富山の3空港を一体的に運用する考え方はますます重要度を増している。関西のように管理の一元化まで踏み込まなくても、旅行会社や航空会社への企画の共同 提案など、さまざまな分野で連携の可能性が広がっているが、石川、富山県は3空港を持つ強みをまだ十分に生かし切れていないように思える。 日航の経営再建などで地方路線を取り巻く環境が厳しさを増すなかで、九州などでも空 港連携を探る動きがみられる。小松、富山空港ともに、新幹線時代を見据え、海外路線や地方間路線のテコ入れを進めているが、それだけにとどまらず、両県には3空港の共存共栄で認識を共有し、より踏み込んだ連携策が求められている。 今年からは小松−上海路線を運航する中国東方航空と、富山−上海路線をもつ上海航空 が経営統合し、両路線はより連携しやすい環境になった。政府は中国富裕層に限定していた個人観光ビザを7月から中間層にも拡大する方針を固め、中国人観光客はさらに増加が見込まれる。競合路線として需要を食い合うだけでなく、双方の路線を発着便として上手に組み合わせ、北陸全体のスケールメリットを引き出したい。 全日空は昨年4月から、小松、能登、富山空港の羽田便について、発着地が3空港のい ずれかであれば往復割引運賃を適用するシステムを導入している。同一地域の空港を一つの空港とみなす「マルチエアポート」の考え方であり、3空港は運賃制度で一足早く一体化が実現しているのである。 こうした割引の仕組みを、たとえば小松、富山空港双方に乗り入れる国際便にも応用で きないだろうか。それぞれの独自路線は協力して支え、競合路線についても複数の玄関口を生かした戦略を練るなど、自治体同士で積極的に知恵を出し合いたい。
◎口蹄疫の被害拡大 対応が後手に回った印象
宮崎県で家畜感染症の口蹄疫(こうていえき)の被害が拡大の一途をたどり、処分対象
が6万匹を超えた。10年前に宮崎県と北海道で発生した際は牛700頭余の処分で済んだのに、被害がここまで拡大したのは、国の対応が後手に回ったからではないか。口蹄疫は昨年、中国や台湾で散発的に発生し、今年に入って韓国にも広がった。いわば 警戒警報が鳴っている状況下で、ウイルスの侵入を許してしまった。被害を拡大させた原因を徹底検証し、対策に生かす必要がある。 口蹄疫や鳥インフルエンザ、豚コレラなどの越境性感染症は、国際的な交通手段の発達 によって、感染拡大のスピードが速くなっている。水際で食い止めるのが容易ではないからこそ、発生時には迅速に対応し、万全の手を打たねばならない。 宮崎県では、10年前と比べて政府の対応の遅れを指摘する声がある。今月1日、陸上 自衛隊に災害派遣を要請した東国原英夫知事は、民主党の小沢一郎幹事長との会談後、「(国の)指揮系統が後手後手に回っている。こういう危機管理をきちっとやってもらいたい」と不満を漏らした。畜産農家への低利資金融資など担う社団法人などが政府の事業仕分けの対象となり、事業の縮小を迫られるなどして、機敏に対応できなくなっているという声も聞かれる。 赤松広隆農林水産相は10日、口蹄疫発生後初めて宮崎県入りし、家畜の殺処分による 農家への補償割合を現状の5分の4から、全額に引き上げる方針を示した。連休中はメキシコ、キューバ、コロンビアへ外遊中で、1週間不在だった。初動体制に問題はなかったか、事業仕分けの結論は妥当だったのか、再点検が必要だろう。 口蹄疫は感染力が非常に強く、まん延防止のために殺処分が義務付けられている。英国 では2001年、早期の封じ込めに失敗し、1千万匹以上の羊や牛を殺処分する事態となり、総選挙を延期するほどの影響が出た。被害がここまで拡大した以上、国が前面に立って拡大防止のための防疫措置を講じてほしい。
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