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380万人の購読履歴を分析 日販の最終兵器「ウィンプラス」のマーケティング力

G25月10日(月) 11時49分配信 / 経済 - 産業
G2 Vol.3誌面より
取材・構成/岸武史


デジタル書籍が普及する中、書店、出版社の間に立つ取次はどう存在感を示していくのか。取次大手、日本出版販売株式会社(日販)は、380万人(10年2月8日現在)の読者のデータベースを利用した徹底的なマーケティングに力を入れている。08年に日販が、出版社、書店向けに開発した購買履歴分析システム「WIN+(ウィンプラス)」は、業界内で好評だ。日販マーケティング本部の古幡瑞穂氏に、使い方のレクチャーを受けながら、話を聞いた。

―「ウィンプラス」は、380万人の会員がいつどこでどんな本を購入したかワンクリックでわかるすごいシステムですね。

古幡 では、まず実際にやりながら見ていきましょう。例えば「G2」と入れてみます。上に出てくる人口分布図のようなグラフが、「G2」vol.2を買っている読者を性別、年代別に分けたものです。

―40代、50代の男性が多いですね。3番目に多いのが、30代の女性というのは意外です。

古幡 「G2」を購入している読者が、ほかにどのような本を買っているかも分かります。1位が「文藝春秋」の09年10月号で併読率は13・4%。3位から5位までも「文藝春秋」の別の号ですね。書籍に限れば、11・3%の人が野中広務さんと辛淑玉さんの『差別と日本人』(角川書店)を読んでいます。「G2」の読者がどんな人たちか何となく見えてきませんか? では次に、「文藝春秋」の読者はどんな人たちかを見てみましょう。(「文藝春秋」のタグをクリック)

―60代から80代までの男性がほとんどを占めていますね。

古幡 このように各々の書籍、雑誌の読者がどのような人たちなのか、簡単かつリアルタイムに調べられるのがウィンプラスの大きな特長です。出版業界は、これまでマーケティングという視点が欠けていたと指摘されているんですよ(笑)。出版社がどうすれば売れる本を出せるのか、書店がどういう棚作りをすれば、お客さんが本を買ってくれるのか。こういう時代の中で、書店、出版社の間に立つ取次としてできることは、蓄積してきた顧客情報を両者に還元することだと考えたのがスタートでした。

―顧客データはどうやって集めるのですか。

古幡 弊社が06年から始めている「Honya Club」というポイントカードシステムです。弊社がシステムを開発し、書店さんに利用してもらっています。4年間で会員数が380万人を超えました。この貴重なデータベースを可視化したのがウィンプラスです。年代別だけでなく、ピンポイント検索も可能です。今、40歳ちょうどの男性がどんな本を一番買っていると思いますか。

―ちょっと思いつきませんね。

古幡 では入れてみましょう……。はい。なんと小学生に人気のコミック『NARUTO 第49巻』(集英社)でした。「コロコロコミック」(小学館)も5位にランクインしていますね。恐らくこれらはお子さんのために購入されたのでしょう。このほかに、ウィンプラスを使えば、何人の読者が何冊買っているかを調べることもできます。一言でベストセラーと言っても、組織買いされているケースも少なくないのです。

本誌が後でウィンプラスを使って調べたところ、大川隆法の『創造の法』は4454冊が売れていたが、買っていたのはたったの246人だった。池田大作の『池田大作名言100選』は369冊の販売冊数に対して117人の購入人数だった(2月8日現在)。

■龍馬本より福山関連本を

―ほかにウィンプラスを使ってどういうことができますか。

古幡 20代をターゲットに本や雑誌を作ろうと思った時は、20代に反響のある本を徹底的に調べればテーマのヒントになります。逆にあるテーマの本を20代に読ませたいと思った時は、実際に同じテーマの本が20代に買われているかどうかを調べることもできます。

―書店のメリットはどういうものでしょうか。

古幡 たとえば、NHKの大河ドラマ「龍馬伝」関連本のフェアを企画するとします。坂本龍馬関係の本は150タイトル以上もあり、書店さんにすれば、どれを並べればよいか難しい。こういう時にウィンプラスを使うと、「龍馬伝」関連本の読者のほとんどが、主演の福山雅治さんの写真集などを購入していることが分かります。だから「龍馬伝」のフェアをやる時は、龍馬関連の本を並べるより、福山関連の書籍と一緒に並べたほうが成功しやすいと考えられます。
書籍の編集や書店の棚作りは、これまで担当者の勘に頼ってきました。もちろん、それを否定するつもりはありませんが、ウィンプラスを活用すれば新しい発想が出てきたり、思い込みを修正することも可能です。書店さんにも大いに活用していただきたいのですが、一番はやはり制作の最前線にいる出版社の編集者に利用していただきたいですね。



古幡瑞穂(Mizuho Furuhata)
1975年、長野県生まれ。97年日本出版販売株式会社に入社。特販営業部を経て、現在、www.(トリプルウィン)推進部MD課MD係長

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  • 最終更新:5月10日(月) 11時49分
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