Business 野口悠紀雄の「経済危機後の大転換――ニッポンの選択」
  • はてなブックマークに登録
  • livedoor Clipに登録
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • Buzzurlブックマークに登録
  • |  
野口悠紀雄の「経済危機後の大転換――ニッポンの選択」へ

(第13回)経済「誤」運営で損失 なんと100兆円ナリ(3) - 10/05/10 | 12:15


[+]画像拡大

 しかも、次の意味で、さらに問題なのだ。金融機関の損失や公的資金の国民負担は、国全体としての損失ではない。金融機関や納税者が損失を被ったのは事実だが、借金の返済から免れた人は利益を得ている。これらは相殺するので、国全体のネットの損失は、ずっと小さい。

 しかし、今回の対外純資産の損失は、日本国民全体としての損失である。もちろん、世界全体を見れば、利益を得た国がある。日本の対外資産の大半はアメリカに対するものなので、利益を受けた国は、アメリカだ。アメリカは、いわば、合法的に債務を逃れたことになる。

 今回の事件はしばしば「史上最大のデフォルト」と言われるが、事実そのとおりだと言わざるをえない。「日本がカモだ」とは、このような意味だ。

 なお、アメリカに対するもう一つの資産大国中国は、人民元の対ドルレートを08年以降、1ドル=6・8元に固定しているので、これまでのところ、こうした巨額の評価損は生じていない(今後、元の切り上げを行えば、生じる)。

経済運営の責任を追及すべきだが…

 「100兆円の損失」といっても、あまりに大きすぎて実感がわかない。そこで、日本人1人当たりに直してみると、大略100万円になる。5人世帯なら500万円だ。これは、暗算でもできる計算だが、あまりに異常な結果なので、もしや間違ってはいまいかと、何度も検算した。残念ながら、計算は間違っていない。

 ただし、これがどういう形で今後の国民生活に影響するのかは、はっきりわからない。そもそも資産の評価損は、身近で発生しても、なかなか実感できないのである。

 たとえば、地価下落で自宅宅地の評価が下がったとしよう。売却すれば損失が生じたとわかるが、住み続けるかぎり、数千万円の損失でも普通の人は気にしない。寿司屋で10万円請求されるほうが、よほど損失感が大きい。対外資産評価損は国全体のものなので、さらにわかりにくいのだ。

バックナンバー

ビジネス新着情報一覧へ


マーケット情報

© 2008 Thomson Reuters

日経平均株価
日経平均株価 日経平均株価 10530.70 +166.11
TOPIX TOPIX 944.64 +12.90
円/ドル 円/ドル 93.21  
NYダウ平均 10,380.43 -139.89
【PR】
Trendy Books
会計HACKS! サッカーの見方は1日で変えられる 経済危機のルーツ ストーリーとしての競争戦略 「話し方」で人を動かす「超」心理術

東洋経済オンラインは、東京証券取引所・大阪証券取引所・名古屋証券取引所・ジャスダック証券取引所・野村総合研究所・ダウ・ジョーンズ・ジャパン(株)・トムソン・ロイター社によって提供される情報を用いて、センティリオン株式会社で作成および運営を行い、情報提供をしております。 日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。