Business 野口悠紀雄の「経済危機後の大転換――ニッポンの選択」
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野口悠紀雄の「経済危機後の大転換――ニッポンの選択」へ

(第13回)経済「誤」運営で損失 なんと100兆円ナリ(2) - 10/05/10 | 12:15


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 これは、08年1年間の損失である。期間を長く取るとどうか?

 08年における円ドルレートの変化幅は、年初の109円から年末の90円まで19円である。ところで、07年夏のレート123円程度と現在のレート93円は、30円程度の差がある。したがって、07年から現在までのネット資産の評価損を単純な比例計算で求めれば、139兆円になる。購入原価を123円にするのは高すぎるというのなら、115円としても、評価損は100兆円になる。

 正確な数字に議論の余地はあるとしても、この規模の損失が、日本の対外純資産に生じたことは間違いない。そして、これが将来の円安で取り戻せる可能性は、ほとんどない(今後円高が進めば、さらに拡大する)。

不良債権処理損の10倍の損失

 「100兆円の損失」とは、どの程度のものか?

 「今回の金融危機では、アメリカの金融機関が無謀な投資を行って甚大な損害を被った」と言われる。それは、事実そのとおりなのだが、どの程度の損失だろうか?

 IMF(国際通貨基金)が昨年の10月に発表した「世界金融安定化報告」(GFSR)によると、07年から10年の期間においてアメリカの銀行に発生した損失は、約1兆ドルだ。誠に巨額の損失だが、右で見た日本の対外純資産の損失は、これとほぼ同規模だ。

 日本は1990年代後半に金融機関の不良債権に対処するため、公的資金の注入を行った。投入総額は46・8兆円で、そのうち返済されずに国民負担となった額は、約10兆円である(詳細は、拙著『戦後日本経済史』、新潮選書を参照)。今回の損失はその10倍だ。

 以上だけを見ても、今回の評価損が、平時に日本経済が被った空前の大損失であることは間違いない。

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