米軍司令官は無人機を「最も価値ある兵器」と呼ぶ。兵士は自宅で目覚め、普通の市民と同じように通勤し、戦争をしている。
この「革命的状況」は、原爆の開発に例えられる。原爆は、冷戦という新たな戦いを生み出した。無人機は現在、世界43カ国が導入。イスラエルやシンガポールは少数で高品質、中国は量を重視するなど、それぞれ戦略を立てつつあり、新たな軍事競争を始めている。
米兵の戦死という犠牲があるからこそ、国民も政治家も、戦争に慎重になる。多数が死傷すれば、派遣に賛成した議員は選挙で負ける。だがパキスタンでの空爆は(米兵が死なないので)米議会で審議されず、戦争とも認識されていない。
戦争に関する調査で、「距離と対象の非人間化」が殺人を容易にするというデータがある。無人機による空爆は遠隔操作で、画面に浮かぶ対象は、人というより小さなモノに見える。
レバノン有力紙の編集者は無人機について「冷徹なアメリカが、直接戦うのを恐れ、機械を送り込んでいる」と話していた。米軍への支援を迷う現地市民は、空爆をどう見るだろうか。無人機はアルカイダ幹部らの殺害には有効でも、多くの新たな(反米の)敵を生み出していないか。無人機戦争を世界の人々がどう受け止めるのか、米国は知る必要がある。(談)
毎日新聞 2010年4月30日 東京朝刊