松本サリン 事件直前、不審な4人組

「2人は宇宙服のような着衣」
目撃証言 現場で調合の可能性

(朝日新聞1995年3月24日39面)

[事件直前、不審な4人組]

長野県松本市で昨年6月に起きた猛毒のサリンを含む有毒ガス事件で、事件当夜、不審な4人組が現場付近で目撃されていたとの情報が、長野県警の捜査本部に寄せられていたことが分かった。ガス発生の約二時間前で、このうち二人は宇宙服のようなものを着ていたという。この事件で、不審者グループの具体的な目撃証言は初めてで、捜査本部は、サリンを製造するために防護服を着た犯人グループだった可能性もあると見て調べている。


調べによると、四人組の目撃は、事件の起きた昨年六月二十七日の午後九時前後。場所は松本市開智二丁目の路上で、有毒ガスの発生現場とみられる第一通報者の会社員方南隣の池付近から、南西へ2百五十メートルほど離れている。大型乗用車の車内に二人がおり、その車のそばに銀色っぽい宇宙服のようなものを着た二人が立っていたという。

目撃したのは帰宅途中の会社員で、今年に入って、捜査本部のある松本署に名乗り出た。「夢を見ているような不思議な光景だった」と話したという。

捜査本部のこれまでの調べで、有毒ガスが発生したのは午後十時四十五分ごろで、現場からは、サリン製造に使った可能性のある器具や容器、痕跡は見つかっていない。

また、純粋サリンは常温では気体だが、揮発性が高く、拡散しやすい。霧粒一つでも毛穴などから体内に入ると三十分以内で死に至るといわれ、製造のためには厳重な防護服が必要。捜査本部は、車外の二人が着ていたのは防護服で、現場で薬品を調合してサリンを製造し、容器などを持ち去った可能性もあるとみている。

捜査本部は、東京・地下鉄サリン事件を捜査している警視庁と連絡を取り合い、さらにサリンの副生成物と見られる物質が見つかった山梨県上九一色(かみくいしき)村に捜査員を派遣して、関連を調べている。


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