日伯両国の関係強化に期待
【一部既報】2日から5日まで4日間にわたりブラジルに滞在している日本の前首相・麻生太郎氏が2日午後3時半、聖市リベルダーデ区の文協会館を訪れ、日系4団体(文協、援協、県連、日文連)共催の懇談歓迎会に参加した。麻生氏は、「BRICsの4か国の中でも、ブラジルは共通の利益を追求できるパートナーとして最も親しくなれる国だ」と、今後もブラジルと日本がさらなる友好関係の発展を遂げていく必要性を説いた。
着伯したばかりの麻生氏は、同日午後3時頃からイビラプエラ公園内の開拓先亡者慰霊碑を参拝した後に文協会館に向かい、大部一秋在聖総領事夫妻、ウィリアム・ウー連邦下議、飯星ワルテル連邦下議、上野アントニオ元連邦議員、羽藤ジョージ聖市議、木多喜八郎文協会長、森口イナシオ援協会長、与儀昭雄県連会長、巽ジョー日文連会長をはじめとする日系各団体関係者が約120人集まった同会館貴賓室に笑顔で登場。麻生氏の来場を待ちわびた参加者からは大きな拍手が沸き起こり、この4年間で3度目となる麻生氏の来伯を一同が歓迎した。
共催団体を代表してあいさつに立った木多文協会長は、「日伯友好議員連盟会長でもある麻生先生のご来伯で日伯両国の関係はさらに強固なものになる」とした上で、麻生氏の首相在任期間中に起こった世界的経済危機では、日本政府の迅速な対応によって2万3千人の在日ブラジル人および家族が心温かい支援を受け、帰国のための資金援助を受けたことについて言及。日系団体を代表して麻生氏に謝辞を述べた。
また、将来的に日本の技術力を生かした新幹線がブラジルの国土を走ることは、古くは笠戸丸に乗ってブラジルに渡ってきた日本人移民たちの夢でもあり、日系社会全体が高速鉄道建設計画に関心を抱いていることを心に留めておいてほしいと木多会長は麻生氏に陳情した。
さらに、伯日議員連盟会長に就任したばかりのウィリアム・ウー連邦下議と、伯日議員連盟前会長の飯星ワルテル下議から、政治レベルにおける日伯両国の関係強化を今後も継続していきたい旨が示され、麻生氏に対して記念プレートが贈呈された。
続いて壇上に上がった麻生氏は、BRICsと呼ばれるブラジル、ロシア、インド、中国が世界経済の中で非常に存在感を増しつつあることを認めた上で、「これら4か国の中で資源が豊富で国民感情が親日的な国はブラジルである」として、日本国内でブラジルに目を向ける傾向が強まってきたことを説明した。また、BRICs4か国の中で地理的に最も遠いブラジルだが、2014年に完成予定のパナマ運河拡張工事によって、現在パナマ運河を航行できない超大型のコンテナ船や客船、石油タンカーなどが航行可能となるため、ブラジルと日本がこれまで以上に経済面での結びつきを強くするチャンスだという見解を示した。
今回の来伯目的について麻生氏は、総務大臣を務めていた5年前に開始した地上デジタルテレビの日本方式普及政策が、ブラジルをはじめチリ、ペルー、アルゼンチン、ベネズエラ、エクアドルなど南米諸国で採用されたことに対する表敬訪問だと語り、今後は「日伯方式」として南米諸国でさらなる普及を目指していきたいと将来的展望を語った。
最後に麻生氏は「ブラジルのGDP(国内総生産)は、ついこの間までは1人当たり2千ドルだったのが8千ドルまで上がった。これだけ急激に発展してきたブラジルでは、基礎が出来上がればさらに大きく発展していけるはず。日本とブラジルが手を結んでいけば様々なことが可能になり、新幹線もその一例だ」と今後の両国の関係強化に期待を寄せた。
与儀県連会長の音頭により乾杯が行われ、麻生氏は日系団体関係者との歓談を楽しんだ後、同時刻に文協会館内で開催されていたエスペランサ婦人会の慈善バザーと歌謡祭も視察。訪れた先々で記念撮影や握手に快く応じていた麻生氏は、商工会議所関係者との日伯経済に関する意見交換会が後に控えていたため会場を後にした。
ブラジルに住む多くの日本人が懸念している、日本航空(JAL)のサンパウロ便廃止に対してどのように考えているかという本紙の取材に対して麻生氏は、「JALの問題は一企業としての問題であり、立て直しにはまだ時間が掛かるんじゃないかな」とし、日本政府としての取り組みについては明言を避ける形となった。
なお、麻生氏は3日にリオ、4日にブラジリアを訪問して伯国政府要人と会談を行い、きょうに帰国する予定となっている。
写真:笑顔であいさつする麻生氏
2010年5月5日付
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