「軍事的な抑止力」なんて時代遅れ、憲法9条こそが抑止力だと思います(1)

以前、よくある9条の議論で気をつけておきたいこと、というエントリーで、軍隊を持たないことについてコスタリカの人々はどう考えているかのインタビューを引用しましたが、その時はほぼURLを載せただけだったので、今日は中身をご紹介しましょう。

コスタリカの非武装中立は、紛争を抑止する本当の力とは何か、その理解を深めるのにも一役買うと思います。

ちょうど鳩山さんが、官僚受け売りの絵に描いたような「抑止力」に、遅まきながら目覚めたらしいので、ある意味タイムリーかも?

※ 通常「抑止力」といえば、紛争をおこすのを躊躇させる軍事力を指します。
先日私は『軍事力でなく外交こそが本当の‘抑止力’だ』と書きましたが、その「抑止力」とは「軍事紛争を起こしたり巻き込まれたりしないようあらかじめ予防する方法(別に軍事力に限らない)」というオーソドックスな意味で使いました。
ここでも「抑止力」という言葉をそのような意味で使います。通常言われてる軍事力である抑止力は「軍事的な抑止力」と表現することにします


http://www.jca.apc.org/costarica/siryo/hujiwara.html

(週刊金曜日409号、2002.4.26)

もし、どこかの国に武力攻撃されたら?
サンホセ市民に直撃インタビュー

藤原真由実:弁護士

(引用開始)
 コスタリカは、一九四九年から今までに、七〇回近く憲法を改正している。それほど憲法改正は頻繁に行なわれているのに、軍隊廃止条項を変えようという改正案は提出されたことがないという。また、憲法は自衛のための再軍備の余地を残しているのに、再軍備の勤きもほとんどなかったというのである。これは一体なぜなのか。フィゲレス元大統領の妻カレンさんが述べた「コスタリカは『軍隊はいらない』という考え方をみーんなが共有している国でございます」という言葉は、本当なんだろうか。ようし、大統領や政府関係者など「エラい人」ではなく、ごくフツーの市民みんなが本当に「軍隊はいらない」と思っているのか、直接取材してみようと、サンホセ市街に出撃した。


 インタビューしたのは、国立博物館の警備員、露天商のおじさん、女子学生、デート中の鳶職人、家政婦、タクシーの運転手など。彼らに「自分の国に軍隊がないことをどう考えているか」「他の国から武力行使された時のことを考えると不安を感じないか」「どうしてそう思うのか」など、しつこく聞いてみた。すると、何と全員が「軍隊を解散してその費用を教育や福祉に回したのは正しい」「軍隊なんていらないよ」と回答。「軍隊がないことに不安を感じる」と答えた人は誰一人いなかった。「軍隊はないほうがいい」理由を列挙すると、次のとおり。



1.人が嫌がることさえしなければ、人から嫌なことをされたり、攻撃されたりすることはない。国と国の間も同じで、軍隊を持って周りの国に圧力をかければ、必ず自分の国が同じ目にあう。

2.軍隊を持つと、他の国に干渉するようになる。それでかえって他の国から干渉され、武力攻撃を受けやすくなる。私たちは他国に干渉せず、友好的に接しているから、攻撃される不安はない。

3.武力は、問題が解決できず山積みになった結果使われる。大事なのは、そうなる前に話し合いで解決をはかること。その努力を議論せず、武力行使された時のことだけ問題にしても現実性がない。

4.紛争が起きないようにまず予防すること。そのためには、何と言っても話し合いが大事。世界の完全な平和は夢だと思うけれど、相手を許す寛容の気持ちを持つことも大切。

5.軍隊を持たず、何の攻撃もしない国に、いきなり武力行使するなんてありえない。もしそんなことをしたら、世界中の民主国家を敵にまわすことになる。

6.軍隊にかけていたお金を教育や医療にまわせたから、今のような平和で安全な暮らしがある。こういう生活を失ってまで軍隊を持ちたいとは思わない。

 私たちの質問に、「なぜそんな現実的でないことを聞くの?」と言いたげな人が多く、取材している私が逆に質問されることも。コスタリカ市民は、「軍隊がないから」平和に暮らせると言い、「軍隊がなくても」平和に暮らせるとは言わない。また、平和は毎日の生活の中で「創っていくもの」で、「平和を守る」という表現をする人もみあたらなかった。日本ではよく耳にする「仮想敵国」論や、「世界情勢がどうだからわが国はこうすべき」といった話も聞かれず、むしろ軍隊を持つと国民の生活が貧しくなるとか、紛争の危険性が大きくなるという具体的な現実から考えていること、紛争を予防する努力や対話の大切さを自分の言葉で一生懸命誠実に説明してくれるのが、何とも新鮮で感動的だった。(引用ここまで・強調と番号は私)



コスタリカは日本より遙かに憲法9条を実践している国です。
私がそんなコスタリカの人々に感じるのは、国際社会の中で紛争を回避し友好関係を保っていくためにどうするのが最も良い方法かについて、彼らは極めて現実に沿った合理的な考え方をするリアリストである、ということです。
反対に、「もし他国から侵略を受けたらどうするんだ」と、紛争を回避する方法をもっぱら軍事力的な威嚇、牽制(軍事的抑止力)に求める人々は、今ある現実に即して物事を分析できていない人々だ、と感じます。

さきに結論から言うと、軍隊を持たず(抑止力と言われる米軍の軍事力も含む)徹底的に話し合いで解決しようとする外交こそが、軍事的抑止力より、遙かに戦争を回避できるんじゃないでしょうか
大脇道場の友さんが仰るように憲法9条こそが抑止力だと私も思います。

大脇道場
NO.1607 憲法9条こそが、平和のための確かな「抑止力」・・・じゃない?
NO.1608 軍事的「抑止力論」を乗り越えて


【今の日本に本当に軍事的な抑止力は必要か?】

確かに、領土拡大のためしょっちゅう侵略や略奪にあけくれ、常に地図を塗り替えてた古代・中世ならば、各国は軍事力を備えておかなければ厳しいものがあったでしょう。
しかし今はもう時代が違います。小さい争いはありますが、古代・中世のように領土拡大のためしょっちゅう侵略や略奪を繰り返し、しじゅう国が興亡するということは、私達のまわりでまずありえません。現代は、いきなり敵がイナゴのように侵略してくる時代ではないのです。

「もし他国から侵略を受けたら」というだけでは、単なる抽象的な仮定の話にすぎません。果たして、紛争に発展し他国から攻撃を受ける具体的な危険性が差し迫っているのか、どれほどその蓋然性があるのかをきちんと検証しているのでしょうか。私は疑問に思います。
もし蓋然性の低い仮定の話ならば、防衛費に何千億円もかけるのは甚だ無駄、ということになります。そんな保険は無駄です。

また、物事は原因があって結果があるのです。悪い結果を避けたければ原因を取り除くのが一番でしょう。
紛争を抑止する方法として軍事的抑止力ばかりに頭が行く人は、
『3.武力は、問題が解決できず山積みになった結果使われる。大事なのは、そうなる前に話し合いで解決をはかること。』
という落ち着いて考えればごく当たり前のことがすっぽりぬけています

つまり、紛争の抑止を専ら軍事的抑止力に頼ろうとする姿勢はリアリズムがかけているのだと思うのです。
それを私は「お花畑」と呼びます。
ただ闇雲に侵略されることに脅えて軍備に走るのは、決して科学的な態度とは言えないと思います。

では、具体的に日本の状況を考えてみましょう
「もし他国から侵略を受けたら」という仮定を考えるときでも、だれも「もし万が一フィリピンがせめてきたら」「インドが攻めてきたら」「タイが攻めてきたら」と想定して軍事的な抑止力を準備する人はいないと思います。
いくら将来起こるかもしれない仮定の話でも、およそ現実的にありえない脅威を仮定する人はいません。
そんな無駄な保険に莫大なお金をかける人はいませんね。

ではどこと紛争が起きると想定してるかと言えば一応仮想敵国(?)と目されてるのは中国、北朝鮮ですか。

北朝鮮については決して良好な関係ではありませんが、だからといって直ちに紛争に突入すると思うのは、短絡的すぎるし非現実的すぎます。(前政権はその危険があるかのように散々煽ってましたけど)
なぜなら、北朝鮮にとって、日本を攻撃しても何の利益もないからです。
戦争は国家を疲弊させる大出費を伴いますから(アメリカはそのせいでかなり疲弊してる)、何の見返りもないのに大出費だけしようなんて愚の骨頂です。「気にいらんヤツだから戦争仕掛けてやれ」では国の財布がもちません。
軍事衝突の危険があるとすれば日本よりもむしろ韓国とだといわれています。

中国についてはこちらを是非。
◆リベラル21
2010.04.20 「中国脅威論」の正体を探る(1)
2010.04.22 「中国脅威論」の正体を探る(2)
2010.05.06 「中国脅威論」の正体を探る(3

簡単にまとめますと、
・確かにここ20年で中国の軍事費は飛躍的に伸びたが(20年で22倍)、中国経済全体が急速な成長を遂げてきており、GDPは20年で20倍である。軍事費だけが突出して伸びたわけではない。
中国が特別な軍事的野心を持って、異常な行動に出ているとは考えられない。むしろ国内事情から言って、江沢民がそうであったように、後継の胡錦濤政権も経済成長に見合った国防予算の増額と政権への軍の支持を交換するもたれあいの関係が続いてきたと見るのが自然

・軍事費はアメリカが突出して多く、アメリカ一国の軍事費は世界全体の1兆4640億ドルの41.5%を占めている。
中国は2位とはいえ、国土面積の広さ、人口の大きさを考えれば、軍事費は「その他大勢なみ」と見るのが、常識的というものではなかろうか。国土面積にして中国の25分の1、人口10分の1の日本の軍事費(防衛費)が中国の55%もあることの方が過大と言えなくもないのではないか。

・一般に「脅威」の構成要素とされているのは、「意図」と「能力」である。脅威の対象が自分を侵す「意図」を持っているかどうか、そしてその「能力」があるかどうか、この両者が揃ったときに「脅威」は現実のものとなる。
中国には軍事力に訴えてもある問題を解決しようとする意図はあるか?
近年、台湾と中国は経済的にも緊密な関係にあり、良好であり、紛争が起きるような状況にない。(中国と台湾に仮に紛争が起きたとしても、これは「内戦」であるから、他国が干渉しない限り飛び火することはない。)
日本との尖閣諸島の領有権と東シナ海のガス田開発をめぐる対立があるが、現在、武力衝突が心配されるような深刻な事態とはなっていない。むしろそういう事態を避けるように意識的に平和外交を進めてきていると言える。
それは防衛省の防衛研修所が発行した「東アジア戦略概観2009」も指摘しているところである。

このように「もし中国がせめてきたら」「もし北朝鮮が攻めてきたら」という蓋然性は非常に低いです。
近いうちに記事に記録しようかと思っていますが、あちこちで取り上げられてる元CIA顧問のチャルマーズ・ジョンソン氏は、中国脅威論はアメリカ国防省が年間1兆ドル以上の安全保障関連予算を正当化するために作り出したプロパガンダだといっています。
そんなもののために「軍事的抑止力」など百害あって一利無しです。

個人の人間関係でもそうですが、国家間で100%何の問題もないという状態はむしろ珍しいでしょう。大なり小なりなにかしらあるものです。さっきあげたフィリピンとだって日本人の買春やじゃぱゆきさん(死語?)の問題があるでしょう。
先ほども書きましたが、国家間に何かしらの問題をかかえていて関係が良好とは言えないからといって、ただちに紛争に突入する危険があると思うのは、短絡的すぎるし非現実的すぎてばかげています。
もし中国が「日本は防衛費を拡大している。明日にでもかつてのように我が国に侵略してくるつもりにちがいない!キィキィ!」とヒステリックに叫んだらどうでしょうか?
「おいおい、そりゃあなたには気に入らないところも色々あるけど、何故一足飛びにこちらが侵略することになるわけ?もう少し物事を現実的に見てよ」
と言いたくなるでしょう。

それに、中国も北朝鮮も先の戦争で、日本の軍国主義に苦しめられた経験があります。もしこちらが相手を敵視して武装すれば、かえって反感を買い逆効果だということは小学生にだって想像がつきます。

TIME誌は、鳩山総理が普天間基地機能を沖縄から完全に撤収するのを諦めたのは「中国の軍拡を考慮して」と明確に表現したそうです(http://alcyone.seesaa.net/article/149250830.html
「中国軍拡脅威論」に安易にのせられて、総理は愚かな判断をしたものだと思います。
(仮に軍事的抑止力を備えるとしても海兵隊は中国を牽制する軍事的な抑止力にもなりはしないことは既に書きました)

一体今まで何を学んできたんだか・・・orz

時間がかかっても話し合いによっておよそ侵略してくるとは思えない国(フィリピンやインド等々のように)ばかりになれば、もはや「もし他国から侵略を受けたら」という懸念は消えます。
逆に軍事的な抑止力で「静かな威嚇」をするのであれば、相手を牽制はできるかもしれませんがいつまでたっても懸念は消えないでしょう。

(続きます)

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