週刊「面白法人カヤック」

2010年5月10日

【39】ソーシャルアプリのゲームについて

既存のゲーム業界について

 ゲーム業界は僕らのいるWeb業界と比べると、ちょうど15年ほど歴史が古い業界となります。ですから、それが我々Web業界からすると一つのベンチマークになったりするのではないかと思っています。

 例えば、大手のゲーム会社でずっとゲームを開発をしていた人間がリストラにあったりするケースがあるようですが、これは15年後のWeb業界の状況だとも考えられます。今はまだWebの開発現場で50歳以上の人間はほとんどいませんが、きっとこれから15年後には、50歳を過ぎたWebの開発者がごろごろ出てきます。

 その時、会社から放り出されないためにはどうしたらいいか。どのようなことを身につけておけばいいか。それを探るには、ゲーム業界の現状が参考になるのではと思うのです。とはいうものの、まだ具体的には分析しきれてませんが…。

ソーシャルアプリというゲームジャンル

 モバゲータウンなどを見ていると、実はヒットしているソーシャルアプリのゲームには、既存のゲーム業界が出しているゲームがほとんどないことに気がつきます。

 どちらかというと新興の企業、中でもWeb系の企業が作ったゲームがヒットしている現状です。これは、ゲーム業界に限らず、新しいビジネスジャンルが出てきた時によくある光景です。(ちなみに既存の業界の延長線上で、既存の業界の人間がイノベーションを起こすのがいかに難しいかというのが書かれた良い本『イノベーションのジレンマ』もあります)。

 それはさておき、ここ最近は、パッケージゲームの時代から遷移してソーシャルアプリというゲームが人気になってきており、業界自体が大きく変化しています。

 ソーシャルアプリのゲームには、従来のパッケージソフトのように2〜3年かけて作り込んだものを出すよりも、短い開発工数でさっとリリースし、運営しながら随時変化させていく、かつ最終ゴールも目的も何も決まってないゲームも結構多いのです。

 これは既存のゲーム会社からすると勝手が全く異なるでしょう。さらには、クリエーティブの面では、通信速度の問題もあり、技術的に表現できることが限られているので、表現は非常にしょぼかったりもします。これも既存のゲーム会社からみると、まるで退化しているかのように思えるのではないでしょうか。

 また、開発工数の問題だけでなく、開発コストも価格破壊が起きています。例えば、「pixiv」と言うイラストサイトをご存じでしょうか。ここは、イラストの上手な多くの一般人が自分のイラストを投稿するサイトですが、ここでゲームのイラストを描いてもらう学生を見つけると、驚くほど安い値段でゲームを制作できたりします。

 このような状況の変化により、ソーシャルアプリのゲームにおいては今のところ、既存のゲーム会社よりもWeb会社が作っているゲームの方が人気の上位を占めています。

 ただ、今後はもちろん分かりません。表現力の話をしましたが、スマートフォンといった高い表現力が出せるプラットフォームが普及してくると、既存のゲーム会社のパフォーマンスが発揮されて、逆転現象が起きる可能性があります。

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著者プロフィール

柳澤 大輔(やなさわ・だいすけ)
面白法人カヤック代表取締役。1998年、学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。「ART-Meter」「HOUSECO」「こえ部」など、ユーザー数千〜数万人規模のインターネットサービスを幅広く展開する。ユニークな人事制度(サイコロ給、スマイル給)や、ワークスタイル(旅する支社)など、制度面も現在実験中。近年では、ギャラリー「ART-Meter」、カフェ「DONBURI CAFE DINING bowls」などリアルショップを運営。2009年、ビンボーゆすりを科学したプロダクト「YUREX」を開発。

このコラムについて

週刊「面白法人カヤック」

サイコロ給やスマイル給など、ユニークな制度を多数取り入れている面白法人カヤック。その代表、柳澤大輔さんが、日々考えていること、実験したこと、失敗したことなどを本音で綴ります。ビジネスの世界で役に立つ知恵や工夫が満載です。

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