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中期経営計画で「環境」に舵を切った パナソニックの野心と死角

ダイヤモンド・オンライン5月10日(月) 10時45分配信 / 経済 - 経済総合
 5月7日、パナソニックが中期経営計画を発表した。三洋電機を子会社化してから初めてとなる。

 今回の中計では、「環境」と「ソリューションビジネス」が前面に押し出された。これまで薄型テレビなど単品商品の売上げ増を柱とした中計とは一線を画す内容となった。

 大坪文雄・パナソニック社長は、「リーマンショック以降、市場は極めて大きく変化した。今、もっとも大きなビジネスチャンスがあるのは、環境関連事業だと考えている」。

 薄型テレビ事業が苦戦していることも、戦略転換の理由の一つだ。コモディティ化が進んだことで価格競争が激化し、今や1年で価格が30%も下落する商品と化した。世界ナンバーワンのシェアを誇る韓サムスン電子を除き、パナソニックを含めた他の日本メーカーはみな苦境にあえいでいる。今年に入って 3Dテレビの販売が好調に推移しているなど明るい兆しも見え始めたものの、ここでもサムスンとの激しい価格競争は避けられない。

 そこで、「単品勝負は厳しい。われわれに優位性がある違った土俵を作ろう」(大坪社長)と判断。キーワードとなったのが環境である。優位性とは、さしずめ三洋とパナソニック電工というグループ会社2社の存在だ。

 では、パナソニックが考える環境ビジネスとは何か。中心となるのはエナジーシステム事業だ。これは大きく3つに分けられる。

 まずは、太陽電池などエネルギーを作り出す「創エネ」。ここで強みを発揮するのが三洋だ。三洋は世界最高水準のエネルギー変換効率を誇る「HIT」という太陽電池技術を持っている。そこにパナソニックが資金を投じ、HITよりもさらに高性能の次世代太陽電池を作り出す計画だ。

 次に、リチウムイオン電池を使ってエネルギーを蓄える「蓄エネ」。ここではパナソニックと三洋が互いに補完しあう関係にある。パナソニックはノートパソコン用の小型電池に、三洋は自動車用の大型電池に強みを持つ。両社を合わせた市場シェアは35%で業界トップである。

 最後に、創ったエネルギーや蓄えたエネルギーをコントロールし、省エネを実現するエネルギーマネジメントだ。ここで強みを発揮するのが、パナソニック電工である。住設分野に強く、配電まで手がけている。しかも、電器専門店や住建ルートなど多くの販売ルートを持っていることも強みだ。

 これらグループの総合力で、顧客に合わせた最適な省エネ提案を行うソリューションビジネスこそが、パナソニックの考える環境ビジネスだ。そして、家やビルのみならず、街丸ごとといった単位でソリューションを提供しようとしている。

 現在、エナジーシステム事業の売上高は09年度で5400億円。12年度には8500億円、創業100周年を迎える18年度には連結売上高の3 割、3兆円を売り上げる強気の計画だ。

 だが、そこに死角はないのか。

 まず、販路の問題だ。国内マーケットではパナソニック電工の販売ルートに期待できる。だが、「今後拡大を狙う海外市場には販路がないため未知数。販路を持った企業と提携するか、M&Aを行う必要があるだろう」と外資系証券アナリストはみる。

 次に、三洋とパナソニック電工をどこまで実質的にコントロールできるかだ。長らく縦割りの事業部制で成功してきたパナソニックは、「横の連携を取ることは得意ではない」(パナソニック幹部)。現時点で両社はパナソニックの連結子会社ではあるが、100%子会社でもない。

 38万人を抱える巨艦の舵を切れるか、大坪社長の経営手腕が試されている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 藤田章夫)


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  • 最終更新:5月10日(月) 10時45分
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