八代尚宏・国際基督教大教授 定昇見直しの勧め (2/2ページ)

2010.2.17 05:00

 もっとも経営側の主張のように、単に現行の賃金体系を凍結するだけでは労働側もたまらない。一定数の新卒採用を確保するとともに、低賃金の若年者に手厚い賃金体系の改善が必要だ。今回の春闘で、連合は非正規労働者の待遇改善も打ち出した。しかし、そのために正社員が何を犠牲にするかは明確ではない。

 もともと若年層では正規・非正規の賃金格差は小さく、それが大幅に拡大するのは中高年層である。この主たる要因である定期昇給を維持することは、連合の唱える「同一労働・同一賃金」の実現と矛盾している。

 今回の春闘を契機に定昇を見直し、それを原資として、若年正社員や非正規社員らの低賃金労働者に報いることを、労使は最優先にすべきではないだろうか。

                   ◇

【プロフィル】八代尚宏

 やしろ・なおひろ 1946年生まれ。旧経済企画庁、上智大教授、日本経済研究センター理事長を経て2005年から国際基督教大教授。著書に「労働市場改革の経済学」など。

関連ニュース

注目サイト