ここから本文エリア 雇い主・不動産業者結託/就職安定資金詐欺2010年05月08日 ◆8府県でも類似事件 住居を失った離職者を支援する国の融資制度を悪用した詐欺事件が県内で摘発されて2カ月余りになる。今回の事件では、解雇の実態がない会社員らの名義を使って、雇い主と不動産業者が結託して必要書類を偽造した。地検は4月末までに8人を詐欺罪で起訴し、被害総額は約1千万円に上る見込み。県警は今週、主犯とみられる男を再逮捕した。事件は他県でも起きており、全体像はまだ見えていない。(阿部彰芳) 悪用されたのは厚生労働省の「就職安定資金融資制度」。解雇や雇い止めで社員寮などの住居を失った人を対象に2008年12月から始まった。 必要書類は、申請者が離職して住居を失ったことを示す雇い主の証明書と、宅地建物取引業者が押印する新居の物件情報が載った通知書。二つを職業安定所に提出し、確認を受けると、新居への引っ越しに必要な初期費用(上限50万円)が、全国の労働金庫から審査を経て借りられる。雇用保険が受けられない人は家賃補助費や就職活動費(月21万円を上限に6カ月)の融資も受けられる。 一連の事件では、大分市の人材派遣会社と北九州市の建設業の雇い主が、宅建業者らと結託し、必要書類を用意して、解雇していない自社従業員らに制度を利用させ、金を受け取っていた疑いがある。 県警が主犯とみるのが、神奈川県在住の内装業桐島成仁容疑者(48)=詐欺罪で起訴。県警によると、桐島容疑者は、雇い主や宅建業者に手口を教えて「指南料」を受け取っていたという。桐島容疑者は「何も言うことはございません」と容疑を否認しているという。 大分労働局によると、県内の職安は3月末までに187人の制度利用を認めた。全国では約1万1千人が制度を使い、融資総額は計90億6千万円に上る。 捜査幹部は「雇い主と不動産会社が組めば、悪用は簡単にできてしまう」と指摘する。厚労省によると、同制度に絡む詐欺事件は、大分以外に大阪や福岡など8府県でも確認されている。 対策として、同省は09年8月から、手続きを原則、新居の所在地を管轄する職安に限定し、確認後の調査を強化しているという。今回の事件も大分労働局による、確認後の調査で発覚した。同局職業安定部の安蒜(あん・びる)孝至部長は「住居がないと社会的信用度が低くなり、就職活動にも支障が出る。不正には毅然(き・ぜん)とした態度で臨み、制度を継続していきたい」と話している。
マイタウン大分
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