2010年04月14日掲載 [長崎 / 鳥類]
白鳥、子育て再挑戦 大村市中心部の水路 昨年はかえらず「今年はそっと」
大村市中心部を流れる水路周辺に住み着いているコブハクチョウのつがいが、昨年に続き再び巣を作り卵を温めている。昨年は卵がかえらなかっただけに近所の人たちは「今年こそは」と、つがいの負担にならないようにそっと見守っている。
巣があるのは大村湾に注ぎ込む水路で、住宅や商業施設が立ち並ぶ一角。昨春、どこからか飛来したつがいが巣を作ったものの卵はかえらず、そのまま住み着いていた。
近所の人の話では、今年は3月初旬に前の巣の近くに新たな巣を作り始め、メスは少なくとも4個の卵を温めているという。街中ということもあって人が巣に近づくと、オスは警戒するように巣との間に割って入る。
卵がかえるのを楽しみにしているという近所の田中康純さん(65)は「去年は白鳥を見にすごい人だったが、それが白鳥の負担になっていたのかも。今年はあまり干渉せず、近づかないようにしている」と話す。
日本野鳥の会長崎県支部の執行利博事務局長によると、通常ヒナがかえるのは5月ごろ。コブハクチョウが大陸から県内に渡ってくる例はほとんどなく、このつがいも国内で飼育されたものが逃げ出すなどして飛来したとみられるため、ヒナが成育しても渡っていく可能性は低いという。
「一生懸命卵をかえそうとする姿に涙が出そうになる」と話すのは、つがいの飛来以来約1年間、毎日のように餌をやりに来るという同市立福寺町の山田キクミさん(73)。山田さんの声を聞くと、警戒心の強いオスも近寄って来るという。「人間社会では毎日のように児童虐待のニュースが報道されている。本能とはいえ、わが子のために餌もろくに取らずに卵を温め続ける白鳥の姿に学ぶべきことがあるのでは」と話している。
=2010/04/14付 西日本新聞朝刊=