［魁皇１０００勝へあと８］母に捧げる９９２勝目！…夏場所初日

白星にも厳しい表情の魁皇

　◆大相撲夏場所初日　○魁皇（はたき込み）豊真将●（９日・両国国技館）　１０００勝へのラストスパートは母の日から始まった。立ち合いで右に変わった豊真将を冷静に見て、はたき込んだ。「足が前に出ていたから良かった」。静かに初日の白星を振り返った。

　前夜。都内で母・栄子さんと、充子夫人の両親を交え韓国料理店で食事をした。「けがをしないように」。数年ぶりに一緒に外食した母から励まされた。「いまさら親は何やかんや言わないよ。でも、だからこそ短い言葉で伝わるものがあるよね」。９９２勝目は母へささげる白星だった。

　親への思いがなければ今はなかった。入門から半年を経た８８年秋場所後。ほかの部屋の力士に声をかけられ、誘われるがままに部屋を脱走した。ひと晩、知人の家で過ごし翌日には部屋に戻った。その時、胸にふくらんだ思いがある。

　「こんな半端なことでいいのか。親に心配をかけたままで終わるのか。相撲だけはやり抜こう」

　小学生で学んだ空手、中学での柔道はいずれも中途半端に終わった。３７歳の今、魁皇は告白する。「あの時の思いは今もある」。親のために没頭した土俵への道。１６歳の時に抱いた大志を温めながら１０００勝へ挑む。