きょうの社説 2010年5月10日

◎金沢城公園の人出増 歴史資産さらに生かして
 河北門が復元された金沢城公園の大型連休中の入園者が8年ぶりに兼六園を上回り、2 002年の「大河ドラマ」効果のようなにぎわいの再来を期待させた。天候の具合に加えて、この連休の「百万石菓子百工展」をはじめ、これまでの大規模なイベントが金沢城公園の入園者を押し上げていると県は分析しており、同公園が風格ある歴史空間であるとともに、幅広い文化創造の大きな舞台となることを示している。

 県都の主要施設の一角をなす金沢城公園の活用は金沢の活性化に欠かせない。昨年度は 7年ぶりに入園者数が100万人を突破したものの、隣接する兼六園より約80万人、金沢21世紀美術館より約50万人それぞれ少なく、一層の入り込み増の余地があるといえる。「平成の築城」効果を最大限に引き出すために、価値ある歴史資産をさらに生かす知恵を絞りたい。

 金沢城公園は、大河ドラマ「利家とまつ」の放送に合わせて、加賀百万石博を開催した 2002年度に最多の約222万人が訪れたが、それ以降は年間70〜80万人台で推移していた。100万人の大台に乗った昨年度は、特にシルバーウイークと「金沢城歌舞伎」が重なった9月が前年の5割増しとなった。

 このほかにも「金沢城オペラ祭」や「かなざわごのみ」、百万石行列のクライマックス など、城郭を借景とした歴史都市ならではのイベントがにぎわった。多くの県民と観光客を引きつける金沢城にふさわしいイベント開催の意義は大きい。幅広い層の来場を促し、金沢城の復元整備に関心と理解を深めるきっかけにもなっただろう。

 金沢経済同友会が中長期的な計画の具体案として、辰巳櫓(やぐら)、二の丸御殿、玉 泉院丸入り口の鼠多門(ねずみたもん)の復元を挙げたように、金沢城には多くの歴史的な財産が備わっており、それらを生かすことによって、城だけでなく都市全体の風格が高まる。宮守(いもり)堀やしいのき迎賓館など公園と周辺一帯の見どころも増えている。史跡に触れ、魅力的なイベントを楽しめる公園の活用を進めて、「歴史都市」「創造都市」を実感できる場として磨きをかけてほしい。

◎国際協力銀の融資 国ぐるみの競争に対応
 政府は、海外のインフラ関連事業の受注をめざす日本企業を後押しするため、政府系金 融機関である国際協力銀行(JBIC)の融資を拡大する。新幹線や原発建設など大型プロジェクトの国際受注競争が「国対国の総力戦」になっている現状を考えれば、同行の融資を戦略的に活用することは当然といえる。

 国際協力銀行の将来の在り方については、親会社の日本政策金融公庫から分離・独立さ せる案が政府内で浮上している。市場主義経済がグローバルな広がりを見せる一方で、国家主導型の受注競争が激しさを増しているいま、同行の役割、機能をもう一度根本的に見直すのもよいだろう。

 経済産業省によると、新興国の経済発展や、先進国の施設の老朽化に伴って今後、巨額 のインフラ投資が見込まれている。例えば、世界の電力分野では、2008年から20年までに総額715兆円の投資が必要とされ、上下水道整備など水ビジネスの市場規模(07年で36兆円)は20年に72兆円に拡大する見通しという。

 海外のインフラ需要の取り込みは日本の成長戦略の柱であり、製造業の活路を開くこと になる。しかし、受注競争で日本企業は苦戦を強いられている。欧米や韓国、ロシア、中国勢が官民一体で攻勢を強めているからだ。アラブ首長国連邦(UAE)とベトナムの原発受注で、韓国、ロシア勢に相次ぎ負けたことは、企業同士の技術力の勝負といった次元を超えた、まさに国挙げての売り込みの必要性を示している。

 国際協力銀行の存在は官民連携の象徴といえ、企業の後方支援に回ることで信頼性を高 めることになる。同行の融資業務は海外での資源確保や途上国の事業支援が主目的であり、先進国対象の融資は原発関係に限ってきたが、新幹線輸出などを念頭にこの制限をなくしたのは妥当な措置である。

 むろん、政府系金融機関の基本的な立場は民業の補完である。その原則をないがしろに してはならないが、これまで以上に積極的に国益確保のための役割を果たすことが求められている。