きょうのコラム「時鐘」 2010年5月10日

 30年ほど前、5月の初旬に立山の室堂で遊んだことがある。斜面の雪の中でライチョウをいくらでも見ることができた。最近はそう簡単に会うことはない

昨年、白山では絶滅したはずのライチョウが発見された。DNAから御岳山付近から渡ってきたと分かった。北アルプスから雲海に浮かぶ白山を見たことのある人なら、遠く孤島を目指して旅を始めた一羽のライチョウをいとおしく思うだろう

白山のライチョウは昭和初期に絶滅したと言われるが、明治26年の新聞にも「白山でライチョウ発見」との記事がある。当時既に希少種だったのだろう。昭和の能登で絶滅したトキが脚光を浴びているが、絶滅の「先輩」白山ライチョウの研究も大事である

この300年で地球上から消えた鳥類は130種を超えるという。かつての炭鉱ではガス探知機の替わりに鳥が使われた。環境変化を伝え人間を救う犠牲になったのが鳥だった。絶滅は自然淘汰(とうた)ばかりではなかったろう

白山での発見を機に来月「全国ライチョウ会議」が初めて石川県で開かれる。北陸の環境変化を示す神の鳥の生態に迫ってほしい。