東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

普天間移設・決着先送り論 袋小路の政府・与党

2010年5月9日 朝刊

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題の五月末決着が絶望視される中、政府・与党内で決着を先送りすべきだとの発言が相次いでいる。鳩山由紀夫首相の進退問題に発展するのを防ぐ狙いからだが、なし崩し的に先送りを決め込めば、さらなる政権不信を強めることは確実だ。(関口克己)

 仙谷由人国家戦略担当相は先のテレビ番組収録で「五月末でなくても、少々時間をかけても何らかの成案、合意をつくることに粘り抜いてほしい」と述べた。民主党の主要閣僚から決着先送り論が出たのは初めてだ。

 仙谷氏は、五月末の決着自体にこだわらなくてもいいとの考え。その意味では、県内移設の実現を阻止するために先送りを唱えている社民党党首の福島瑞穂消費者担当相と同じ立場といえる。

 だが、普天間問題では昨年末も決着を延ばした経緯がある。今回、首相が自ら約束した決着期限で何ら答えを出せないとなると、首相への信頼は地に落ちかねない。そこで政府内で浮上しているのが、米国との交渉だけは月内に妥結させ、一定の結論を得るという対米合意優先論だ。

 平野博文官房長官は記者会見で「五月末に向け、日米でどういう状態で合意できるのか最終検討している」と述べた。国民新党の下地幹郎国対委員長も「まずは日米合意をし、あとは(地元と)丁寧に話し合いをして時間をかければ理解を得られる」と歩調を合わせる。

 ただ、こうした筋書きは地元の頭越しに決めることを意味し、地元自治体の猛反発を買うことは確実だ。

 そもそも対米交渉が月内に合意に至る保証はない。米国は、対日交渉で移設先自治体の受け入れ同意を条件として示しているが、政府が移設先として検討する沖縄県名護市、訓練移転を要請した鹿児島県・徳之島がともに拒否しているからだ。

 首相への打撃を緩和しようとする一連の先送り発言は逆に八方ふさがりの現状を浮き彫りにする。当の首相だけは米国と地元、連立与党の合意を月内に取り付ける考えを「変えるつもりはまったくない」と言い張っている。

 

この記事を印刷する