6月から37路線50区間の高速道路を無料化するのに合わせて、それ以外の区間では一定距離を超えると料金を定額にする上限料金を導入する案。普通車の休日上限千円など、ETC搭載車を対象にした現行の割引制度は原則廃止。上限料金はすべての車が対象となり、曜日や時間帯で異なる料金制度は簡素化される。新たな国費の投入はない。時間帯割引の一部や大口・多頻度割引などは、激変緩和措置として2010年度中は継続。割引の財源にしている国費の使途を変更する特別措置法改正案が今国会に提出されており、審議の過程で料金制の在り方も議論される。
(2010年5月9日掲載)
国土交通省が、6月導入を目指す高速道路の料金上限制度に黄信号がともっている。民主党の小沢一郎幹事長と前原誠司国交相の対立に続き、民主党議員の約4割となる178人が参加する「党トラック議員連盟」が政府に見直し要求を提出。関連法案の成立は見通せない状況となり、審議の行方によっては波乱含みの様相だ。政策一元化の旗印の下で、沈黙を守ってきた民主党議員が一斉に声を上げ始めた背景には、既得権を奪われる業界団体に擦り寄る参院選対策も見え隠れする。
●値上げ9割
大型連休中の4月30日。党トラック議連会長の奥村展三・党総務委員長が首相官邸を訪ね「国民を代表する立場として、実質値上げにつながる改正案を容認することはできない」と、国交省案の見直しを平野博文官房長官に要請した。
「国民の立場」を強調する議連だが、その2日前に国会内であった議連臨時総会には全日本トラック協会(東京)の幹部が出席。「値上げとならないよう再検討をお願いしたい」と訴えた。
普通車が、走行約70キロ以上で2千円。中型車が約170キロ以上、大型車が約120キロ以上で5千円。大型観光バスなど特大車が約150キロ以上で1万円となる上限制。同協会は、中型車以上が5千円以上を利用する割合は約11%にすぎず「上限制が現在の割引廃止と引き換えなら約9割が値上げになる」と主張する。
●130万人の力
同協会は全国にまたがっており、加盟社は約5万1千社。従業員数は約130万人と、日本医師会(約16万6千人)などを大きく上回る団体だ。
民主党トラック議連が初会合を開いたのは、現行割引制度の廃止を前提にした上限制導入が取りざたされ始めた2月上旬。参加者は約100人だったが、その後は増える一方だという。
同協会の永嶋功広報部長は「各都道府県協会が、一斉に民主党県連や議員に不満を訴えた結果。130万人という数の力に一定の影響力があることは否定しない」。急速に活発化した民主党議連の動きは、参院選を前にした特定の団体への「配慮」とも受け取れる。
●恩恵拡大も
高速道路料金は普通車で1キロ当たり24・6円の単価に距離をかける対距離制で決まる。この「基本料金」は新制度でも同じだが、現行制度は高速道路会社が行っている割引のほか、自民党政権時代に相次いで緊急経済対策として導入された時限措置が混在。このため西日本高速道路管内で平均割引率は39・8%に達しているが、平日昼間の3割引きは2011年3月まで、夜間の5割引きは18年3月までなど、多くの割引制度は今回の見直しにかかわらずなくなるものだ。
さらに現在、割引を受けられるのは自動料金収受システム(ETC)搭載車に限定。ETCは自動車全体での普及率が49%(09年末)にとどまっており、すべての車が対象になる新制度は、ETCを付けていないドライバーにも恩恵が拡大するという利点もある。
民主党トラック議連が、旧政権が始めた割引制度を前提に、「値上げ」ばかりを取り上げるのは「乱暴」ともいえる。
鹿児島県トラック協会(鹿児島市)の松元健一専務理事は「協会内にも恩恵を受ける長距離業者と不利になる近距離業者の意見が分かれ、統一見解は出せない」と話し、急激な議員サイドの動きと一線を画す動きも出ている。
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