|
「出発進行!」と声を出して合図
|
さいたま市大宮区の鉄道博物館で最新型の本格的な運転シュミレーターを使った「運転士体験教室」が始まった。家族連れなどで連日満席に近い人気を集めている。小学校5年生以上が対象の教室だが、同館は「予想以上に子どもより大人の利用者が多い。解説員のアドバイス付きで40分間じっくり操作できるので、運転のことがよく分かると好評です」と話す。実際に記者が体験してみた。
■難しいブレーキ操作■
25個あるブースには、2007年から京浜東北線などを走っている新型車両E233系の運転席をほぼ再現。コースは高崎線(大宮―籠原間)の設定。プログラムは初級、中級、上級と3種類あり、いま実施しているのは初級(発車と停止の操作)のみ。
まず、運転席に座り計器の説明を受ける。重要なのはマスターコントローラー(マスコン)と呼ばれるレバー。E233系の電車では、マスコン1本を押したり引いたりすることで電車を走らせたり止めたりできる。
一見簡単そうだが、5段階の加速、8段階のブレーキメモリがあり、微妙な操作が要求される。「メモリを見ないでも感覚で入れられるように」と指導されるが、なかなか一発で入れたい位置にブレーキが入らない。
いよいよ電車を走らせる。客室ドアが全部閉まるのをモニターで確かめ、画面の信号機が青になっているのを確認して、ちょっと照れながら「出発進行!」の合図。マスコンを手前いっぱいまで引いて時速90キロに加速し巡航(惰行)運転。初級では北上尾、鴻巣、北鴻巣駅での停車にチャレンジ。画面には見慣れた高崎線沿線風景がリアルな実写映像で投影され、線路脇の道路を走る自転車、散歩する人、踏み切りで待つ自動車などが次々に過ぎ去り、運転士気分を満喫。
しかし風景を楽しむ余裕はすぐなくなり、駅が近づくとブレーキ操作に集中。時速85キロで運行中、6段目のブレーキ(B6)に入れると電車は停止するまで360メートルかかる。計器モニターを凝視しタイミングを計って一気にマスコンをB6に倒す。ブレーキのかかり具合には天気も影響し、雨や雪の時は止まるまでの距離が長くなる。
北上尾駅では、焦って20メートル手前に停車、雪が降る北鴻巣駅では逆に14メートルもオーバーランしてしまった。運行結果がグラフに写し出されて、ブレーキタイミングのずれを納得する。
■プロの技術を認識■
未公開の上級編プログラムの一部(修了試験)も、報道陣に公開され体験。大宮駅から上尾駅までの特別快速高崎線を自分の判断で運転する。線路左脇に制限速度標識が何度も現れるが、よく分からず直感でなんとかこなす。
結果は600点満点で210点。4回の制限速度超過と10メートルのオーバーランが響いた。運転士には動体視力と瞬間的な判断力が必要だと痛感。普段何気なく乗っている電車の安全を支えているプロの技術のすごさを再認識した。
◇◇
プログラムの中級編(信号と速度制限体験)は6月から、上級編(定時運転体験)は7月から公開される。
「運転士体験教室」は1日5回実施、1回500円。各回ごとに教室入口で受け付けている。同館によると土日祝日は各実施時間の1時間前に満席になることもあるという。
問い合わせは同館(рO48・651・0088)へ。
|